2020年7月からのスルバランの新収蔵品の展示開始を知り、見に行く。
あった。
フランシスコ・デ・スルバラン(1598-1664)
《聖ドミニクス》
1626-27年、201.5 x 135.5 cm
2019年度購入
(2020年7月展示開始)
国立西洋美術館
【会場内解説】
ドミニコ会修道院の創設者で、13世紀初めの聖人ドミニクスの肖像です。脇の犬は松明を咥えており、その端に火が灯っていることは、聖人の背後に仄かに光が広がることから確認できます。
本作は、17世紀スペイン絵画を代表する画家のひとりであるスルバランが27歳の頃、セビーリャのサン・パブロ・エル・レアル修道院のために描いたと考えられます。画面の左右と下辺には後代の手によりカンヴァスが追加されていますが、漆黒の背景から静かに人物が浮かび上がる、瞑想性に満ちた雰囲気は、「修道僧の画家」とも呼ばれるこの画家の真骨頂を示しています。
部分:松明を咥えた犬
【作品制作について】
セビーリャでの活動を本格的に始めようとする27歳のスルバランは、1626年1月17日、ドミニコ会のサン・パブロ・エル・レアル修道院と、21点の絵画を8か月以内に納品する契約を結ぶ。
その前年に再婚した妻の縁者のつてがあったらしい。
21点のうち、14点が聖ドミニクス(1170-1221)の生涯を描いた作品。
7点は、西方の四大教会博士(聖アンブロジウス、聖アウグスティヌス、聖ヒエロニムス、大聖グレゴリウス)、聖ボナベントゥラ、聖トマス・アクィナス、そして聖ドミニクス(本作品)の肖像画。
この仕事が評価されたスルバランは、同修道院から追加注文を受ける。これも高い評価。それを機にセビーリャの修道院や教会の大規模な注文を相次いで引き受けるようになる。1630年代、マドリード宮廷での活動こそ上手くいかなかったが、セビーリャでは「修道士の画家」として目覚ましい成功を収めることとなる。
聖ドミニクスの生涯を描いた作品のうちの1点
《ソリアーノの聖ドミニクス》
1626年、190×230cm
サンタ・マリア・マッダレーナ教会、セビーリャ
教会博士の肖像画より1点。
《聖ヒエロニムス》
1626-27年頃、198×125cm
セビーリャ美術館
このような等身大の単身聖人像は、スルバランの十八番となったようである。
現在開催中のロンドン・ナショナル・ギャラリー展に、後年制作の聖女像が出品されている。2点のスルバランを同時に味わう絶好の機会である。
スルバラン
《アンティオキアの聖マルガリータ》
1630-34年、163×105cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
【サン・パブロ・エル・レアル修道院について】
ドミニコ会のサン・パブロ・エル・レアル修道院は、カスティーリャ王国がレコンキスタによりセビーリャを征服した1248年に設立。
ドミニコ会によるアメリカやフィリピンへの布教活動の出発基地として、あるいは、カスティーリャにおける異端審問の拠点として、重要な役割を果たす。
1835年に教会資産の全面的国有化により解散。かつて広大であった修道院の敷地やその建物も、その後の都市開発により、痕跡も伺えなくなったようだ。
【来歴】(国立西洋美術館HP)
1626-. Seville, Convent of San Pablo el Real? (contract signed on the 17th January, 1626);
1691-. Alcalá de Guadaíra?;
1844-. Seville, Francisco Romero Balmaseda
1905-. Francisco de Paula Romero Balmaseda y Canavachuelo Peña
c. 1920, San Sebastián, Francisco Romero Brunet
1948-. San Sebastián, José Manuel Brunet Serrano Bingley Navarro (1892 –1963)
1963-. San Sebastián, Alicia Ortiz de Urbina Gutiérrez (second wife of the former)
1978- Anglet, France. Elisa Marín Gutiérrez (1931- 2011, cousin of the former)
by descent to the current owner
purchased by NMWA, 21 October 2019
【購入価格】
638,383,300円