日本美術の裏の裏
2020年9月30日〜11月29日
サントリー美術館
《雀の小藤太絵巻》2巻
室町時代・16世紀
サントリー美術館
【上巻】
大和国みやの郡の山里に住む雀の小藤太夫妻は、仲も睦まじく、子も授かって幸せに過ごしていた。ところがある日、夫妻で餌をとりに出かけた間に、子を蛇に食われてしまった。悲しみにくれる夫婦のもとに鶯や鶴、白鷺、雁など諸鳥が弔問に訪れる(その数、本作では13種)。そして思い思いになぐさめの和歌を贈り合う。
[前期出品]


鶴の中司
誰とても 子ゆゑ闇路に 迷ふとぞ
思ひ知られて 濡るる袖かな
かわいい子どもを持ったがために、苦しまない親など、どこにもいません。
子を思う気持ちが強いとされる私たち鶴よりも、雀のあなたが泣き子をしのぶ気持ちは強いようなので、感涙を催します。
雀の小藤太
徒し世と 思ひなぞらふ 身にあれば
さまでも我は 嘆かざりけり
千年の寿命を持つ鶴とは違い、取るにたらない雀ですから、私の嘆きもあなたの子を思う気持ちほど強くはないかもしれません。
[後期出品]




鴛鴦(おしどり)の銀杏の督(かみ)
いづこをも 皆をし鳥と 思ひしに
別れし時の 水や結びつ
私は「おし鳥」という名前ですが、この世の「山川草木」のすべては別れるのが「惜しい」場所ばかりです。お子様との別れの時には「末期の水」を飲ませてあげられましたか。
雀の小平太
水鳥の 情けを聞けば 頼もしや
草葉の陰に 宿れ我が子よ
水鳥さんの心のこもった言葉を聞くと頼もしい気になります。どんな場所の草葉の陰にでも、亡き我が子の魂が今でも宿ってほしいと思います。
【下巻】
小藤太夫妻は世の無常を思い、相談の末、遁世を決心する。先に妻が出家・往生をとげ、小藤太も大和国阿弥陀峰で修行する梟の尊阿弥陀の庵室で剃髪し出家する。小藤太は、諸国を行脚し、最後は雀の森に庵を結んで百歳まで踊念仏をして往生をとげる。
[前期出品]

梟の庵で剃髪する小藤太

[後期出品]
(参照)サントリー美術館「お伽草子」展図録