東京でカラヴァッジョ 日記

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【画像】「福岡アジア美術館ベストコレクション」(福岡アジア美術館)

2024年03月11日 | 展覧会(現代美術)
福岡アジア美術館 ベストコレクション
2023年9月14日〜2024年4月9日
福岡アジア美術館
 
 
 福岡アジア美術館を初訪問。
 
 2024年、福岡アジア美術館が福岡市美術館から分離して開館してから25周年を迎える。
 その「スペシャル企画」として、「アジア美術館初 トップアーティスト勢ぞろい」を謳うコレクション展が開催されている。
 
 本展を知ったのは、今年1月に訪問した小金井市はけの森美術館での「うるおうアジア」展でのこと。
 福岡アジア美術館のコレクションのうち、主にアジア近代美術が紹介されていた「うるおうアジア」展。
 本展のチラシも置かれていて、現代美術を対象とするとのことで、おもしろそうだな、とは思っていたが、訪問することになるとはその時は想像していなかった。
 
 夜間開館時間帯の訪問。
 地下鉄中洲川端駅からすぐの複合施設ビルの7階。
 本展以外にもコレクションによる2つの企画展示が実施されていて、入場料・一般が200円と安い。
 別に、特別展「世界遺産 大シルクロード展」も開催中(東京では東京富士美術館に巡回済、福岡のあと、宮城、愛媛、岡山、京都に巡回)であるが、夜間開館の対象外であったようだ。
 
 
 
 さて、本展。
 
 社会へのメッセージを強烈に発信する作品群、そのパワフルさ、これは凄い。
 
 10作家24点の展示より、以下5選。
 
 
ファン・リジュン(1963〜、中国)
《シリーズ2 No.3》
1992年
「スキンヘッドの自画像で閉塞的な社会に一石を投じた時代の寵児」
 本展メインビジュアルで、トップバッターとして登場。
 同じ顔、同じ格好のスキンヘッドの青年は、作者自身。
 
 
 
リン・ティエンミャオ(1961〜、中国)
《卵 #3》
2001年
「自らの経験を斬新に表現し、中国における女性アーティストの台頭を象徴」
 出産直後の自身の写真を大小無数の糸玉で床に固定し、女性の行動を制限する妊娠・出産・育児が「女の仕事」と見なされる状況を伝えます。
 ブツブツした写真の皮膚は鶏か蛙のそれのようで、転がる糸玉は女性が一生のうちに排卵する卵子です。
 本作は、作者の思春期の記憶(昼食時に決まっていなくなるクラスの少女について、鶏や蛙のように洞窟で卵を産んでいる、という噂がたったこと)に基づいています。
 女性の社会的役割について疑問を表現した作者の代表作です。
 
 
 
ジャン・シャオガン(1958〜、中国)
《若い娘としての母と画家》
1993年
「歴史の波に翻弄された家族の肖像が絶大な人気を博す」
 人民服を着た娘時代の母のセピア調の肖像と、真っ黄色い顔をした現在の画家の肖像。
 
 
 
ナリニ・マラニ(1946〜、インド)
《略奪された岸辺》
1993年
 大パネルの左から、インドの岸辺に着いたイギリス人(植民地史の始まり)、続く大パネル3枚にギリシャ神話の王女メディアに基づく男女のドラマ、その右隣に西洋文明による自然破壊、最後の2枚に1992年のムンバイ暴動が描かれる。
 
 
 
N.N.リムゾン(1957〜、インド)
《内なる声》
1992年
 
「神秘的な造形と深い思索によって、不条理に満ちた現代社会へ静かに警鐘を鳴らす」
 一糸まとわぬ姿の男性像が、無数の剣先を突きつけられる中、目を閉じ穏やかな表情でたたずんでいる。
 端正かつ堂々たるそのからだは、不殺生・非暴力を説くジャイナ教の聖者像に原型をもつ。
 本作は、1991年にインドで民族・宗教間の対立を背景におきた元首相暗殺事件を契機に制作された。
 
 
 
 これまでアジア現代アートは散発的に気まぐれに見に行くことはあったけれども、現代美術はよく分からない、と引き気味であった私。
 今回、社会の諸問題を背景にしたメッセージの内容は作品解説に頼るしかないけれども、作品が有するパワーを感じる。このパワーは凄い。
 
 
 同館では、本展以降も引き続き、25周年記念のコレクション展が予定されている。
「アジアン・ポップ」(4/20〜9/3)
「ベストコレクションII(仮称)」(9/14〜4/8)
 
 
 福岡アジア美術館は、2024年3月6日に開館25周年を迎えます。世界で初めてアジアの近現代美術に特化した美術館が、ここ福岡で産声をあげたのは1999年。その先進的な活動は、世界の美術界から高い評価と尊敬を集めてきました。その歴史の長さとコレクションの質の高さを考えたときに、世界で<アジア現代アートの聖地>と言えるのは、まさに福岡アジア美術館をおいてはないでしょう。
 それを記念して、アジア美術の「オールスター」とでも言うべき10名のアーティストを紹介します。選んだ10名は、現代に生きるアーティストであり、世界で活躍することで母国のアートの評価を国際的に高めたり、自国の先進的なアートシーンをリードしてきたアーティストです。
 約5,000点のコレクションから選りすぐった10名24点の作品は、いずれもアジア現代アートの高みを示しています。アジアのトップアーティストにフォーカスした本展が、みなさまに新鮮な体験と感動をお届けできることを願っております。


2 コメント

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Unknown (tenchan-ganbare)
2024-03-12 23:51:45
スキンヘッドの自画像は、どこかの展覧会で出会ったことがあります。パンチがありましたね。
名古屋のトリエンナーレでも、アジアは日本よりも顕在な社会矛盾と人口増に伴う社会のパワーアップする未来への自信で、面白い作品が多いです。
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Unknown (k-caravaggio)
2024-03-13 08:08:15
てんちゃん様
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
本展では、中国、韓国、インド、パキスタン、ベトナムの5か国10名の作品が紹介されていましたが、そのメッセージ性とパワーには日本のアーティストは太刀打ちできないのでは、と思いながら見てました。
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