2021年11月から開催予定の「メトロポリタン美術館展」。
芸術新潮2021年4月号によると、なんと!!ペトルス・クリストゥス作品が出品されるという。
【出品予定作品】
ペトルス・クリストゥス
《The Lamentation》(哀悼)
1450年頃、25.4 x 34.9 cm
→1890年のMET所蔵後、他館への貸し出し実績なし。
初期フランドルの画家の作品が来日するなんて、極めて稀ではないか。サイズは小さめなのだな。楽しみ。
メトロポリタン美術館は、HPで確認する限り、ペトルス・クリストゥス作品5点(うち1点は帰属)を所蔵している。
他の4点は、次のとおり。
ペトルス・クリストゥス
《Portrait of a Carthusian》
1446年、29.2 x 18.7 cm
→1949年のMET所蔵後、2度、展覧会のため他館に貸し出し(2002年のワシントンNG、2018年のフリック・コレクション。いずれも米国内)
ペトルス・クリストゥス
《A Goldsmith in his Shop》
1449年、98 x 85.2 cm
→1975年のMET所蔵後、展覧会出品歴なし。
ペトルス・クリストゥス
《Head of Christ》
1445年頃、14.6 x 10.5 cm
→1959年のMET所蔵後、他館への貸し出し実績なし。
ペトルス・クリストゥスに帰属
《The Annunciation》
1450年頃、77.5 x 64.1 cm
→1931年のMET所蔵後、他館への貸し出し実績なし。
各作品の展覧会出品歴を見る限り、他館への貸し出し実績があるのは1点のみ(それも米国内の美術館)。
もし、芸術新潮に出品画家の名前だけが掲載され出品作が掲載されなかったなら、私は来日作品を予想してみたであろうが、展覧会出品歴(=他館への貸し出し実績)に基づき予想をしたであろうから、絶対に的中しなかっただろう。
ペトルス・クリストゥス(1415/20〜73)は、現在のベルギーの地で生まれ、1444年以降(死の都)ブリュージュで活動した。
美術史的には、ヤン・ファン・エイク(ブリュージュで活躍、1441年没)の弟子であった(その影響下にあってその後ロヒール・ファン・デル・ウェイデンへ様式移行する)と考えるのか、先にロヒールの影響下にあってブリュージュに来てから晩年にヤンの影響を受けたと考えるのか、が論点となってきたらしい。
なんて書いているが、実はこれまで私にとって、ペトルス・クリストゥスについては、この作品を描いた画家である、程度の認識しかなかった。
この作品が、あまりにも強烈。
ペトルス・クリストゥス
《若い女性の肖像》
1470年頃、29.1×22.7cm
ベルリン美術館
画面が輝いている。肌がひときわ輝いている。まるで磁器のよう。
高貴な女性の表情は、冷たいというか不機嫌というか、不穏な雰囲気。
驚くのは、輝くような美しい肌なのに、よく見るとその肌はひび割れで覆われている。まるで別の生物、あるいは仮面のよう。
是非お会いしたい作品。