没後300年記念 英一蝶
風流才子、浮世を写す
2024年9月18日〜11月10日
サントリー美術館
英一蝶(はなぶさいっちょう、1652-1724)の15年ぶりという回顧展。
前期に引き続き、後期を訪問する。
第一のお目当ては、これまでその存在すら知らなかった、本展のメインビジュアルを務めている重要文化財指定作品。
重文《布晒舞図》
遠山記念館(埼玉県川島町)
後期展示。配流先の三宅島時代の制作らしい。
布晒しの舞。
舞い手の右手には扇子、左手には非常に長い白い布。布が地面につかないよう、巧みに、かつダイナミックに操りながら舞う。
翻る布や人物の造形の躍動感や、布をつまむ細い指など指先まで神経の行き届いた表現が見どころのようだ。
小サイズ作品であるが、一蝶の最高傑作とも言われているらしい。
上記以外に、特に楽しんだ作品5選。
《朝暾曳馬図》静嘉堂文庫美術館
後期展示。朝、一人の少年が、馬を曳いて橋を渡る。川の水面には、少年と馬のシルエットが映る。この時代に光と影の関係に焦点をあてた作例はほとんどないらしい。
《仁王門柱図》個人蔵
後期は、本作のほかにも、寺社で落書する人を描いた作品が多い。手の届く範囲では満足できず、道具を使って、より高い、より遠い、より困難な場所を目指すのがおもしろい。
《吉原風俗図巻》サントリー美術館
通期展示で前後期で場面替え。後期は全5段の後半(4〜5段)の公開。第4段は揚屋の1階、台所と遊女たちの控え室、第5段は揚屋の奥、遊女の部屋と奥座敷での遊興が、配流先の三宅島で記憶に頼りに描かれる。
《雨宿り図屏風》メトロポリタン美術館
通期展示。年齢も職業もさまざま、本来かかわることのない老若男女が同じ空間で身を寄せ合う不思議な一体感、を再度味わう。
東博所蔵の別バージョンが前期限りの展示で、後期は見比べ鑑賞できないのは寂しい。
《狙公・盃廻図》大手前大学
後期展示。一幅に猿回しの芸人、もう一幅に盃回しの芸人が描かれる。猿回しの方の図の捺印は逆倒されており、「老眼逆印」の添書がつけられる。一蝶の言い訳。
もっぱら都市風俗画を楽しむ。