ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
2020年3月3日〜6月14日
→開幕日未定
国立西洋美術館
カナレット
《大運河のレガッタ》
1735年頃、117.2×186.7cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
カーニバル期間中の2月2日に毎年行われていた「レガッタ・レース」。
一本の櫂で操作される小型のゴンドラたちは、遠景に見えるリアルト橋に向けて走る。派手に飾り立てた大型の舟たちは、多くの見学者を乗せる。
画面左端にギリギリ描かれた緑と白の大理石風の円柱のある建物は、水に浮かべた仮設の建物「レガッタ舞台」で、レースの表彰が行われる場所とのことである。
カナレット(1697〜1768)は、ヴェネツィア生まれ。画家である父親の工房で修業し、1720年にヴェネツィアの画家組合に登録。以降、ヴェドゥータ(景観画)の画家として活躍する。
大金持ちのグランド・ツアー客たちにとって、「俺はこの建物のこの窓のところに泊まっていたのだ」と説明できるほどに街の景観を写真のように正確に捉えた彼のヴェネツィア景観画は、お土産品として大人気であったようだ。また、1746〜55年にはイギリスに滞在し、同地の景観画も多く残している。
本展出品作以外にも、グランド・ツアー客のお土産としてだろうか、ナショナルギャラリーは多くのカナレットのヴェネツィア景観画を所蔵する。
以下、4選。
カナレット
《大運河のレガッタ》
1740年頃、122.1 x 182.8cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
本展出品作と同じ構図の作品。
カナレット
《キリスト昇天祭の日のサンマルコ湾での「海との結婚」》
1740年頃、121.9 x 182.8cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
前掲作品の対作品。
ヴェネツィアの元首ドージェが、緋色と金で飾られた御用船ブチントーロに乗り、サン・マルコ広場からリドの潟口まで出て、「海よ、われらは汝と婚姻せん」と唱え、金の指輪を海へ投げ入れる。ヴェネツィアによる海上の覇権を象徴する儀式。
1000年前後にダルマチア地方の海賊を撃退しアドリア海を管理下に置いたことに始まる。その頃は、「海を渡る者皆のために、海が穏やかでありますように」という祈りが捧げられ、総督たちに聖水がふりかけられたあと、聖歌隊が歌う中、残りの聖水が海へと撒かれるというものであった。
1177年、ヴェネツィアが神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世との仲介をしたことへの褒美として、教皇アレクサンデル3世が自分のしていた指輪をヴェネツィア総督に与え、毎年指輪を海に投げ込むよう言ったことを機に、結婚式の形が整えられた。
カナレット
《サン・ヴィダル広場とサンタ・マリア・デッラ・カリタ修道院(石工の仕事場)》
1725年頃、123.8 x 162.9 cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
カナレットの初期作品。サンタ・マリア・デッラ・カリタ修道院は、現在のアカデミア美術館。
カナレット
《聖ロッコの祝祭》
1735年頃、147.7 x 199.4cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
1576年のペストの終焉を祝い、毎年8月16日に行われたペストの守護聖人・聖ロッコの祝祭。
サン・ロッコ教会のミサに出席したヴェネツィアの総督と高官、外国の大使たち。
画面の背景を大きく占める建物は、ティントレットの壁画連作で有名な聖ロッコ大同信会館である。
2018年の「ビュールレ・コレクション」展に出品された《カナル・グランデ、ヴェネツィア》で、カナレットの魅力に目覚めた私。2年ぶりの作品との対面を楽しみにしているところなのだが。