木村安兵衛と山岡鉄舟は明治維新の前 剣術を通じて知り合ったという 茨城県から江戸へ出て来たばかりの木村安兵衛と
徳川慶喜将軍のお供でしばしば水戸藩に出かけていた山岡鉄舟との出会いだった
明治7年に新しく出来た銀座煉瓦街で あんぱん作りに熱中していた木村親子に鉄舟は 試食をさせられると
「これ うまいじゃないか」
とあんぱんの味をたいそう気に入った
山岡鉄舟
木村安兵衛
西洋から入ってきたパンとは違う酒種を使い その生地であんを包み焼き上げるという技術が鉄舟の心をとらえた
「陛下に召し上がっていただこう」
木村親子の努力を暖かい目で見守り 明治8年4月4日隅田川沿いの水戸藩下屋敷であんぱんが明治天皇に献上された 今から149年前
つまり1875年のこと
あんぱんのへそに 奈良の吉野山から取り寄せた八重桜の花びらの塩漬けが埋め込まれ 季節感をたっぷり盛って焼き上げられた
あんぱんは水戸藩下屋敷に届けられた あんぱんは明治天皇のお気に召し ことのほか皇后陛下(昭憲皇太后)のお口にあった
そして
「引き続き納めるように」
と両陛下のお言葉を頂いた 献上の世話役 鉄舟こと山岡鉄太郎侍従の表情もゆるんだという
安兵衛・英三郎・儀四郎親子に早速 上首尾であったことが伝えられ その夜、堵と喜びに包まれた銀座煉瓦街の木村屋は夜遅くまで
華やぎガス灯のあかりが揺れながらのんびり店前を照らしていた
このことから明治天皇に献上された4月4日は あんぱんの日として記念日に制定されている