国際会計基準審議会(IASB)は、企業買収に関して投資者に提供する情報の拡充を狙いとした修正案(公開草案「企業結合 ― 開示、のれん及び減損」)を、2024年3月14日に公表しました。(上記ASBJのページは、IASBのプレスリリースの日本語訳です。)
具体的には、IFRS第3号「企業結合」とIAS第36号「資産の減損」の修正案です。
修正の内容は...
「IASBはIFRS第3号「企業結合」の修正を提案している。修正案は、企業の最も重要な取得の目的及び関連する業績目標(これらがその後の期間において達成されているかどうかを含む)を報告することを企業に要求する。企業はすべての重要性のある取得について期待されるシナジーに関する情報を提供することも要求される。しかし、企業は取得の目的を損なう可能性のある情報を開示することは要求されない。
IASBは、減損テストの的を絞った改善を行うため、IAS第36号「資産の減損」の関連する修正も提案している。」
2分弱の説明動画。
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Video: introducing the Exposure Draft Business Combinations—Disclosures, Goodwill and Impairment
簡単な解説(全10ページ)。
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Snapshot(PDFファイル)
まず、開示について。
戦略的買収 strategic acquisitionsというカテゴリーを設けて、それに該当する場合は、より詳しく開示させるそうです。また、開示の免除に関する規定も設けられるようです。
(上記Snapshotより)
買収した事業が、既存事業と統合された場合は...
(同上)
減損テストについては、解説では3つのポイントにまとめられています。
IAS36号では、のれんをキャッシュ生成単位に割り当てる際のもっとも大きな単位は報告セグメントであると規定されていますが、今回の修正案では、そのレベルがデフォルトではないことを明確にするそうです。
また、のれんが含まれるキャッシュ生成単位が、どのセグメントに含まれるかを開示させるそうです。
3番目は、使用価値の算定方法の変更です。まだコミットしていない将来のリストラクチャリングや資産の増強から生じるキャッシュフローを含めることに対する制限や、税引き前ベースで算定しなければならないという規定を廃止することを提案しています。これにより、経営者が使っている情報により近いインプットを減損テストにおいて使うことができ、その結果、投資家がよりレレバントな情報を得ることができるようになるとのことです。
日本の減損会計基準の使用価値はIAS36号を参考にして規定されていますが、そちらの見直しにもつながるのでしょうか。(たぶんめんどうなのでやらないと思いますが)
将来キャッシュフローが税引前か税引後かという点については、のれんの減損のような事業の単位で減損テストを行う場合には、税引後がしっくりきますが、個々の固定資産あるいはもう少し小さな資産グループの場合は、税引前がよいように思われます。そもそも、米国基準のように、のれんの減損と、それ以外の固定資産の減損は、完全に別扱いにするほうがよいのではないでしょうか。