企業会計基準委員会ウェブサイトによると、国際会計基準審議会(IASB)が、2024年11月12日にIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の修正案を公表したそうです。(上記リンクは、IASBのプレスリリースの日本語訳)
「国際会計基準審議会(IASB)が本日、企業の貸借対照表における引当金の認識及び測定に関する要求事項の改善を目的とした公開協議を公表した。引当金とは、時期又は金額が不確実な負債である。」
The International Accounting Standards Board (IASB) has today published a consultation aimed at improving the requirements for recognising and measuring provisions on company balance sheets. Provisions are liabilities of uncertain timing or amount.
「IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の修正案は、引当金を計上すべき時期及び引当金の測定方法を企業がどのように評価するのかを明確化する。当該修正は企業が測定に関するより多くの情報を提供することも要求することになる。その提案が関連性がある可能性が最も高いのは、多額の長期の資産除去債務を有しているか又は賦課金及び類似する政府の科す負担金の対象となる企業についてであろう。」
The proposed amendments to IAS 37 Provisions, Contingent Liabilities and Contingent Assets would clarify how companies assess when to record provisions and how to measure them. The amendments would also require companies to provide more information about the measurement. The proposals would most likely be relevant for companies that have large long-term asset decommissioning obligations or are subject to levies and similar government-imposed charges.
これだけでは漠然としていますが、こちらは、あずさ監査法人による少し詳しい解説です(PDF版全10ページ)。
国際会計基準審議会、公開草案「引当金ー的を絞った改善(IAS第37号の改訂)」を公表(あずさ監査法人)
「本公開草案のポイント」より。
「IASBは、本公開草案でIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に関する要求 事項のうち、以下の3つの側面について、的を絞った改善を提案しています。
(a) 負債の定義及び引当金の認識要件の1つである「現在の義務」に関する要求事項を、2018年に改訂された「財務報告に関する概念フレームワーク」(以下、 「概念フレームワーク」) と整合させる
(b) 引当金の測定に関する以下の2つの側面
(i) 現在の義務を決済するために必要な将来の支出の見積りに含めるべき コストの範囲の明確化
(ii) 将来の支出を現在価値に割り引くための割引率の明確化」
わかりやすいフローチャートが載っています。
(上記あずさ監査法人解説より)
わが国では、引当金の会計基準といえば、企業会計原則(の注解)ということになります。もちろん、その後の金融商品会計基準、退職給付会計基準、資産除去債務会計基準、収益認識会計基準などでカバーされている部分はありますが、引当金の基準自体は全く変わっていません。また、企業会計基準委員会のテーマとしても取り上げられていません。
なお、会計士協会で2013年に引当金に関する研究資料を公表しています。さまざまな引当金について具体的に検討しています。
当サイトの関連記事(「我が国の引当金に関する研究資料」について)
その後どうなったのでしょう。
最近の事例で気になるのは、不正会計調査をおこなった調査委員会の費用や訂正監査の費用を過年度に遡って引当計上している会社があることです。とても、過年度の期末日における「現在の義務」とは思えないのですが...。(IFRSではなく日本基準だから保守的に早めに引き当てるのは容認される?)