これだけの規模の災害になると、現段階では優先順位は低いかもしれませんが、会計(開示)や会計監査における対応も考えておく必要があると思われます。以下、個人的に考えてみたことを述べようと思います。
まず、上場会社、会社法監査対象会社などの会計・開示については、地震の影響を受けている企業では、復旧作業と並行して、被害状況を調査し、その結果を、必要に応じて開示(プレスリリース、臨時報告書提出など)したり、決算に結果を反映させる必要があります。
決算に関しては、どこまで正確な数字を出すのかが問題となります。通常の決算と同じレベルの正確さを要求するのであれば、企業の状況によっては、当局や取引所は期限を延ばすべきでしょう。期限が変わらないのであれば、少し乱暴な意見ですが、ごくざっくりとした数字を使って決算を組み(注記で粗い見積りであることを開示することが必要)、後日精査して、大きな差があれば、訂正報告書を提出するということもありうるのではないでしょうか。
12月決算から2月決算までの会社でも、重要性があれば、少なくとも後発事象として開示する必要があります。
会計監査に関しては、地震の影響に関連する項目(重要性がある場合)も含めて、監査手続を、期限までに十分行うことができれば、問題ありませんが(またそのように努力すべきですが)、そうでない場合は、手続に関する限定をつけた監査意見を表明することもありえるでしょう。後日十分な手続が完了した時点で、無限定の監査報告書と差し替えることになります。ざっくりとした数字しかなく、地震の影響が正確に反映されているかどうかの心証が得られない場合も同様です。
こうした例外的な対応をした場合(しなくてすめばそれに越したことはありませんが)、心配されるのが当局の対応です。例えば、無限定適正でない監査報告書付きの有報などを提出したり、後日訂正報告書を提出した場合には、形式的にはルール違反ですから、ペナルティが課せられる可能性があります。ぜひ、柔軟な対応をお願いしたいものです。
こうした問題は、阪神淡路大震災の際にも起きていたはずですが、そのときと比べて、開示・監査ともルールがはるかに厳格になっており、ルール通りにできなかった場合のペナルティも重くなっています。事前にきちんと考えておく必要があると思われます。
また、以上は、個人的な意見にすぎないので、そのまま実務には適用できないかもしれません。会社は監査人とよく相談したり、監査法人内部でも、審査部門と協議するなどして、対応することが必要となります。
監査法人も、危機対応能力が問われます。
東北地方太平洋沖地震により多大な被害を受けた地域における申告・納付等の期限の延長の措置について(国税庁)
平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震にかかる災害に対する金融上の措置について(金融庁・日銀)(PDFファイル)
金融・証券市場は14日以降も平常稼働 金融相が明言(朝日)
【緊急】会員・準会員のみなさまへ 「仙台沖地震について」(日本公認会計士協会)
東日本大震災被害額、阪神の10兆円はるかに上回る想定(朝日)
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