会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

米最高裁、SECの行政手続きによる証券詐欺処罰権を違憲と判断(ロイターより)

米最高裁、SECの行政手続きによる証券詐欺処罰権を違憲と判断

 米連邦最高裁判所が、証券取引委員会(SEC)が行政手続きを通じて独自に処罰を決められる権限を憲法違反とする判断を示したという記事。

「最高裁が審理していたのは、元ヘッジファンドマネジャーが起こした訴訟。SEC内部の行政審判官がこのマネジャーは証券詐欺を働いたと判断し、これを踏まえてSECが罰金を科すなどの措置を行ったことに異議を申し立てた原告側の言い分を、下級審が認めていた。

下級審は、行政審判官制度に基づいてSECが処罰する権限は、憲法が定める陪審員裁判を受ける権利に違反すると指摘。最高裁でも、ロバーツ長官をはじめとする保守派6人の判事がこれを支持する多数意見となった。」

日本ではどうかというと、日本国憲法で、「第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」、「第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定され、裁判を受ける権利、裁判なしで刑罰を受けることがない権利が定められています。実際には、金融庁などの行政機関による処分で完結することがほとんどですが、一応、異議申立てを行って、裁判に訴えることができることになっているので、違憲ではないのでしょう。

ちなみに、先日、金融庁の証券取引等監視委員会から処分勧告が出たTHE WHY HOW DO COMPANYも、勧告に従わず、聴聞、審判手続及び裁判等で自社の主張を行っていくと発表しています(→当サイトの関連記事)。

これも、米最高裁の決定の記事です。

米最高裁、政府規制当局の権限を制限-「シェブロン法理」覆す(ブルームバーグ)

「米連邦最高裁判所は28日、曖昧な法律を政府の規制当局が解釈できる法理を無効にした。何十年も続いた法理が覆されたことで、環境や消費者保護、金融監督において政府機関が持つ権限が制限される。

今回争点となったのは、漁業規制をめぐる訴訟で1984年に出された判決に由来する「シェブロン法理」と呼ばれるもの。これを最高裁判事が6対3で覆し、大きな政府に反対する保守派に待望の勝利をもたらした。民主党政権はこの法理を根拠に、新たな規制を設けてきた。

今回の最高裁判断は長期間維持されてきたルールだけでなく、これから政府機関が有する権限についても新たな疑問を呈する。特に暗号資産(仮想通貨)や人工知能(AI)といった新しい分野におけるルール作りには重要な意味を持つ。今回の判断により、政策に関する問題については立法化を通じて議会が直接的に対応するよう求めるとともに、規制当局が権限を超えた場合には、それを抑制する責務を下級裁判所の判事に与える。」

これも、行政機関の権限を弱めようという動きのひとつでしょう。大統領が介入して、SECが定めたルールは覆されなかったようですが...

バイデン米大統領、SECの指針を覆す決議に拒否権発動(CoinDesk)

「アメリカのジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は、米証券取引委員会(SEC)の職員会計公報第121号(SAB121)を廃止するとの合同決議に対して拒否権を行使した。同大統領が5月31日午後に発表した。

SAB121は物議を醸しているSECの会計指針で、顧客のために暗号資産を保有する金融機関に対し、資産を自社のバランスシート上で保有するよう指示するもの。この指針があることで、金融機関が暗号資産企業と協力することが非常に難しくなるとの批判が出ていた。

バイデン大統領は拒否権発動を発表する声明で、「消費者と投資家の幸福を危険にさらす措置」は支持しないと述べた。」

2022/05/04 SEC職員会計公報第121号(SAB121)および暗号資産の保全に関する考え方【詳細解説】(PwC)

「米国証券取引委員会(SEC)のスタッフは、SEC職員会計公報第121号(SAB121)において、暗号資産に関するカストディ(保管・管理)業務を行う報告企業が暗号資産の保全に係る負債および関連する資産を貸借対照表に公正価値で計上することを要求するガイダンスを公表しました。」

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