会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

消費税10% 「必要な対応とる」“イートイン脱税”に麻生財務相(産経より)

消費税10% 「必要な対応とる」“イートイン脱税”に麻生財務相

財務大臣が、コンビニエンスストアなどの店内で飲食するにも関わらず、申告せずに消費税の軽減税率8%で購入する行為が行われていること(イートイン脱税というそうです)について、実態把握に努め、必要な対応を講じたいと述べたという記事。

「10月1日に導入された消費税の軽減税率制度について、コンビニエンスストアなどの店内で飲食するにも関わらず、申告せずに8%の税率で購入する行為が行われていることについて、麻生太郎財務相は8日の記者会見で、「業界団体などを通じ実態把握に努めないといけない」とした上で「周知、広報を含め、軽減税率制度の円滑な実施・定着にむけて必要な対応を講じたい」と述べた。」

「店員が全ての客に店内飲食か持ち帰りかを聞く必要はなく、張り紙などで申告を促せばよいことになっている。」

たしかにそういう発言をしているようです。

麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(10月8日)(金融庁)

「テイクアウトとかイートインの話の取扱いについて、ご指摘の点も含めて、適用税率の判定を行うためには業界団体において取扱いの周知がなされるなど現場においてもいろいろな対応が行われているのだと承知をしていますが、引き続きこれは各事業者において、営業の実態に応じて取組みを進めていただくということで、政府としても必要に応じて業界団体等を通じて実態の把握に努めていかなければいけないところだと思っていますが、周知、広報を含めて軽減税率制度の円滑な実施、定着に向けて必要な対応を講じてまいりたいと思っております。」

関連する国税庁Q&A。

http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/03-05.pdf

「持ち帰ることも店内で飲食することも可能な商品」で、「店内で飲食させるか否かにかかわらず、持ち帰りの際に利用している容器等に入れて販売する」ような場合、「顧客に対して店内飲食か持ち帰りかの意思確認を行うなどの方法で、軽減税率の適用対象となるかならないかを判定していただく」となっていますが、その意思確認は、掲示で済ませることもできます。

「その際、大半の商品(飲食料品)が持ち帰りであることを前提として営業しているコンビニエンスストアの場合において、全ての顧客に店内飲食か持ち帰りかを質問することを必要とするものではなく、例えば、「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」等の掲示をして意思確認を行うなど、営業の実態に応じた方法で意思確認を行うこととして差し支えありません。」(問52)(問53、55なども同様)

これは店舗側の話で、正しく意思を伝えなかった場合の顧客の責任についてはふれていませんが、顧客が消費税を納めるわけではないので、正しく申し出しなかったからといって、脱税にはならないでしょう。

弁護士による解説。

「イートイン脱税」「正義マン」より害悪なのは「軽減税率」そのもの…弁護士が法的問題を検証(弁護士ドットコム)

「「今回増税となった『消費税』について、納税義務者は、飲食品やサービスを提供する側の事業者です(消費税法5条)。飲食品を購入する消費者は、消費税分を対価の一部として負担しているとしても、消費税の納税の義務を課されているわけではないですから、消費税を『脱税』する立場にはありません。」」

「消費税法以外の問題として、刑法上の詐欺罪などにあたる可能性はあるのでしょうか。

「...レジで支払いをする時にイートインを利用するつもりなのに『持ち帰り』であると嘘を告げて店側をだまして商品を交付させたとして、詐欺罪(刑法246条1項)に形式的には該当するといえるかもしれません。

私としては、店側としては客の申し出のとおりにレジを打って代金を計算して販売すれば足り、精算後に本当に客が持ち帰りにするのかイートインを利用するのかまではいちいち考えて売買をしていないでしょうから、店側が『だまされた』とまではいえないので、詐欺罪は原則として成立しないと考えます。

また、税抜き価格の2%分の代金を免れた詐欺利得罪(同条2項)の問題についても、同様に店側が『だまされた』といえないでしょうし、2%分の代金免除の処分行為もないでしょうから、私見としては詐欺利得罪も原則不成立と考えます。

仮に持ち帰りと偽って飲食品を購入した人がいたとしても、店側に実質的な損害がなく、詐欺罪は現実には問題にしないでしょう。むしろ、そんな人がいたとしても店側としては詐欺罪だと騒がれる方が迷惑至極でしょう」」

1件1件の取引は取るに足らない金額でも、店内飲食が主体の業態の企業からすると、ライバルであるコンビニなどで甘い扱いが横行した場合、自分たちに不利になります。そのような声が強くなれば、厳しく取り締まるという方向になるかもしれません。その場合でも、消費者を直接どうこうするということはないと思いますが...。

その他関連記事。

各紙の社説をまとめています。

消費税、10%へ引き上げ 軽減税率は定着するのか(SankeiBiz)

「食品や料理を提供する店側は、全ての客に口頭で伝える必要はなく、「イートインで飲食する場合はお申し出ください」などと掲示するだけでいいことになっている。あくまで「お客さん側の自己申告」が前提というスタンスだが、客側に趣旨が徹底しているかは疑問だ。

 仮に「持ち帰り」と申告しながら店内で食べた場合、厳密にいえば詐欺罪にあたる可能性がある。“イートイン脱税”という言葉まであるというが、逆に「イートインで食べる」と申告したものの、途中で気が変わって持ち帰る場合は、過払い税分を払い戻してもらえるのだろうか。疑問は尽きない。」

ポイント還元については...

「非接触型ICカードや、スマートフォンのPayサービスアプリでの支払いは、店舗に設置された専用端末に「かざすだけ」、あるいはQRコードで決済情報を読み取るだけで支払いが完了する。通常の現金払いに比べると、短時間で決済できる利点がある。だが、こうしたPayサービスは雨後のタケノコ状態で、すべてに対応するのは利用者も店側も大変な負担だ。とりわけ、こうしたサービスに不慣れな高齢者はポイント還元の恩恵から置き去りにされている。」

ポイント還元 コンビニ採用方式について実務家の間で仕入税額控除で疑義(税務通信)

「多くのコンビニでは,還元方法について「即時充当」と呼ばれる,購入したその場でポイント分を購入金額に充てる仕組みを採用している。...本当に,この仕組みによるポイント還元が消費税法で値引(仕入対価の返還等)として取り扱われる場合,仕入税額控除の対象となる課税仕入れ等の税額はどのように算出するのか,といった幾つかの疑問が実務家の間で生じている。」
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