年収増は賞与の「脱費用化」で(記事冒頭のみ)
日経の「私見卓見」という外部投稿の意見記事。公認会計士の人が書いています。
生活が苦しい世帯が多い一方で、企業業績は好調で利益剰余金も積み上がっている。賃上げすべきという声も大きいが、経営者の立場からすると、人件費の増加は利益を減らすことになり、極力避けたいとの判断になる(特に基本給)。賞与は業績に応じて増減させることは可能だが、現行制度上は「費用」とされており、やはり抑制のインセンティブが働く。そこで...
「そこで、平均給与を上昇させるために、「賞与の脱費用化=剰余金処分項目化」を認めてはどうか。現行会計制度上、費用処理が求められている賞与について、原則利益確定後の「剰余金の処分項目」とすることで、費用計上しなくてよいことにするのである。
賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与であるが、その性質を「労働の対価」ではなく、「利益の還元として支払われるべきもの」と捉えれば、獲得した利益の分配である「配当」と同様の性質を有する。会計処理についても費用処理ではなく、利益処分の一つと捉える方が妥当ではないか。」
これにより、賞与増額のハードルは解消され、年収増、消費支出拡大、経済活性化につながるとのことです。
以前は、役員賞与については、利益処分が多く採用されており、それを従業員にまで拡大するのだと考えれば、さほどおかしな意見ではないのかもしれません。
しかし、株主との間の増資、配当などの取引(資本取引)を除く、純資産の増減は、純利益かその他の包括利益に計上されるという現行の会計基準は、わかりやすく優れていると思います。その例外となる、利益処分方式はやはり認められないのではないでしょうか。
また、費用計上しなかったとしても、株主持分等変動計算書には、項目の一つとして出さざるを得ません(そうしないと純資産の増減のつじつまが合わなくなる)。株主や投資家、アナリストなどは、それをみて、当期純利益を修正し、本当の業績を計算するでしょうから、会計処理をいじったからといって、あまり意味があるとは思えません。
それに、給料なら費用、賞与なら脱費用となると、経営者は、給料を減らして、その分賞与を減らそうとするかもしれません。従業員にとっては、安定的にもらえる給料が減って、不安定な賞与が増えることになりかねず、うれしくはないでしょう。賞与をある年にたまたま多くもらえたとしても、将来減るかもしれないと思って、消費を抑制するかもしれません。
いずれにしても、いろいろ考えてみる材料にはなる意見だと思います。