消費者金融大手の武富士で、米サブプライム住宅ローンにからむ損失が08年3月期決算に最大で300億円になるという記事。
「武富士は07年5月に、02年に発行した300億円の社債についてメリルリンチ日本証券が組成した仕組み金融取引(仕組み債)を利用しオフバランス化たが、その仕組み債が債券市況の急激な悪化などによって清算されるため、わずか9か月で損失が出たことになる。」
会計処理としては、損失が出たこと自体よりも、社債をオフバランスしたというところが気になります。
実質的ディフィーザンス解消のお知らせ(PDFファイル)
会社のプレスリリースによれば、実質的ディフィーザンス実施により昨年5月に償還処理していたものが、メリルリンチから突然、仕組み金融取引の清算が開始されたとの通知を受けたとのことです。
会計士協会の金融商品会計実務指針では、信託を含む第三者への支払(信託の場合は実質的ディフューザンスと呼ばれます)は、金融負債の消滅には該当しないとされていますが、実質的ディフューザンスの一種であるデットアサンプションは経過措置として社債の消滅の認識が認められています(46項)。
その条件としては「取消不能で、かつ社債の元利金の支払いに充てることを目的とした他益信託等を設定し、当該元利金が保全される高い信用格付けの金融資産(例えば、償還日がおおむね同一の国債又は優良格付けの公社債)を拠出すること」が挙げられています。
3日の日経朝刊によれば、メリルリンチと武富士は「欧米企業のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)指数に連動する商品とトリプルA格の債券を組み込んだ仕組み債を組成」したとのことです。「トリプルA格の債券」という点では上記の条件に合致していますが、デリバティブを組み込むことまでは認められるものなのでしょうか。
他の会社でもデットアサンプションは再点検する必要があるのかもしれません。こうしたケースが発生した以上、原則どおり、実質的デフューザンスによる社債のオフバランスは認めないということにすべきでしょう。
いずれにしても、証券会社が持ってくるような変なスキームにはのらないことが大切です。会計基準のすき間を狙ったようなスキームは、会計基準違反を問われないまでも、非常に危険なわなが仕組まれている場合があります。
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