太陽監査法人と優成監査法人の合併が決まったことに関連して、監査法人業界の再編、競争促進を取り上げた日経社説。
「中堅の監査法人である太陽監査法人(東京・港)と優成監査法人(東京・千代田)が、2018年7月をめどに合併することで基本合意した。業務収入などの面で大手4法人を追う、準大手規模の監査法人が誕生する。」
太陽に関しては、合併前から「準大手」のカテゴリーのはずですが。2つの中堅法人が合併して、準大手になるというよりは、準大手のひとつが合併により規模を拡大するとみるべきでしょう。
「日本では大手4法人が時価総額ベースで9割以上の上場企業を監査している。寡占とも言える状態が監査の規律を緩ませ、オリンパスや東芝などで起きた会計不祥事の背景にもなっている、といった指摘は少なくない。
太陽と優成の合併が監査業界の競争を促し、監査の質の向上につながることを期待したい。
上場企業の監査数でみると、太陽は144社と大手の一角であるPwCあらたの122社を上回っている。合併後の新法人の監査企業数は200社近くに増える。監査業界での存在感は高まろう。」
これは昨年公表された金融庁の報告書(「会計監査の在り方に関する懇談会」提言)をなぞった意見のようです。
「国内の監査市場においては、大手の4監査法人が上場時価総額ベースで9割以上の上場企業の監査を担っており、このような監査市場の寡占化が、企業、特に大手上場企業を中心とする大企業による監査法人の選択の余地を狭めていること、また、このような寡占が品質向上に向けた競争を阻害している懸念があることも指摘されている。このため、大手上場企業等の監査を担う能力を有する監査法人を増やしていくための環境整備に取り組む必要がある。」(「会計監査の在り方に関する懇談会」提言の「監査法人のマネジメントの強化 」より)
今回の合併を日経が比較的大きく取り上げているのは、金融庁の考えを忖度しているためなのかもしれません。あるいは、太陽が東芝の監査を引き受ける前ぶれでしょうか。
社説の後半では、合併後の課題として、グローバルな監査体制の構築と情報投資を挙げています。
太陽・優成合併 両代表に聞く「IT駆使、監査の質向上」(日経)(記事冒頭のみ)
「——売上高や海外拠点の今後の目標は。
山田氏「売上高は5年後をめどに合併時の90億円強から150億円を目指す。海外拠点は現在の約20拠点から倍増させたい。中南米やアフリカも視野に入っている」
小松氏「国際会計事務所のグラントソントンのネットワークも活用するが、日本企業は現地子会社の監査を、日本人の会計士に見てもらいたいというニーズは高い」」
日本人を派遣する海外拠点を増やすのはよいことですが、クライアント・ファーストを考えると、監査クライアントの海外子会社監査を、無理矢理提携事務所に移させるようなことはやらない方がよいでしょう。
「——金融庁は「監査法人の交代制」を検討しています。
山田氏「企業側に四大法人以外の選択肢を提供できるようにしたい。会計士の数は合併時に約500人になる。5年後をめどに800人規模に増やしたい。売上高2兆円以上の企業も監査できる体制を目指す」
——今年、東芝が監査法人をPwCあらたから太陽に変更することが取り沙汰されました。
山田氏「東芝側から接触があり、前向きに検討した。ただ人員の問題などから難しいと判断した。東芝は(四大法人とは利害関係が多く)変更できない状況だった。企業側の選択肢を広げることが社会にも有益だ」」
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