新型コロナワクチンの接種状況について取り上げた記事。
「高齢者向け新型コロナウイルスワクチンの市区町村への供給が本格化する。10日からの2週間で、高齢者の約半数に相当する量が届く見通し。市区町村にはネットや電話で接種予約が殺到し、枠がすぐ埋まる状況が続く。供給増に備え、円滑な予約対応や医療従事者の確保が一段と重要になる。」
当サイトでも以前ブルームバーグの4月22日の記事を引用するなどしてふれたことがありますが、ワクチン自体はすでにかなりの量が日本に入ってきているようです。
「国内の接種用として、日本は米ファイザー製と近く承認される見通しの米モデルナ製を欧州から輸入している。日本政府が到着を確認したのは4月25日時点で2800万回分ほど。大型連休以降は毎週1000万回分程度が届く予定で、これまでに約4800万回分が届いたとみられる。
政府が確保したマイナス75度の超低温倉庫で、足元ではファイザー製2000万回分程度を保管しているもようだ。9日までに市区町村の倉庫に届いた高齢者向けは670万回分ほどで、10日からの2週間で1870万回分を配布する。
モデルナ製は4月30日に第1便が到着した。6月まで4000万回分が段階的に届く見通し。到着分はマイナス20度ほどの冷凍倉庫で保管しており、国営の大規模接種センターに順次運び、5月24日に接種を始める。」
これに対して、接種実績は...
「国内の接種実績は医療従事者、高齢者の合計で約443万回。接種回数は少しずつ増加しており、平日の5日間平均でみると4月28日以降は1日20万回を突破した。それでも政府が掲げる「1日100万回」にはなお遠い。」
ファイザー製を考えると、4800万回分輸入していて、接種実績は約440万回ですから、日本のどこかに4300万回分以上が在庫となっているということになります。
円滑な接種のためにはある程度ワクチン在庫を保有していないといけないのでしょうが、実績として1日20万回しか接種できていない(これでもだいぶ増えた数字)のに、4千万回分も在庫が必要なのでしょうか。
ファイザー製だけでこういう状況なうえに、モデルナ製もどんどん到着するわけですから、ますます在庫が膨れあがることになります。
ジャストインタイム方式発祥の国とは思えません。
もちろん、ワクチンを確保していること自体はよろこばしいことなのですが、ワクチン調達と消化があまりにもアンバランスとなっています。世界的にワクチン争奪戦となっている状況で、頼みもしないのに海外からワクチンを送ってくるということはありえず、日本政府はメーカーと調整しながら、調達スケジュールを決めているはずなのに、このありさまです。
日本のワクチン接種遅れに批判強まる-大量のEU製が承認済みと発覚(4月30日)(ブルームバーグ)
「EUは26日、ファイザーやモデルナの製品を含め、EU域内の施設で製造されたコロナワクチン約5230万回分の日本向け輸出が承認済みだと明らかにした。EUからワクチンが出荷された43カ国の中で最も多い量だ。
国内接種の遅れについて、日本の政府当局者が供給上のボトルネックが理由の一つだと指摘してきただけに、日本向けワクチンが大量に存在するとの事実は国民をいら立たせている。ブルームバーグのワクチントラッカーによれば、接種を受けた日本国民はわずか1.3%と経済協力開発機構(OECD)加盟国37カ国で最も低い。これに対し、米国は37%、英国は約36%だ。
EU承認を巡る情報がソーシャルメディア上で取り上げられる中、河野太郎行政改革担当相(ワクチン担当相)は数字には誤りがあるとツイッターで指摘。同相のオフィスは30日に電子メールで、日本に届いているファイザー製ワクチンは約2800万回分だと説明した。加藤勝信官房長官は同日、モデルナ製ワクチンがこの日到着したと明らかにしたが、量については言及しなかった。
EUのワクチン輸出の統計についてはブルームバーグ・ニュースが22日に最初に報じ、その後、EU当局が発表資料で確認。日本ではツイッター上でアナリストや医師、野党政治家がこれに言及し、「ワクチンはどこにあるのか」との疑問が飛び交った。」
調達したワクチンを順調に消化できれば、結果オーライなのでしょうが、状況は厳しそうです。ワクチン接種体制の問題は去年からわかっていたはずなのに、どうしてこうなってしまうのでしょう。
【独自】「7月末までに高齢者ワクチン接種完了は無理」全国の地方自治体の6割回答 菅首相の指示で混乱(5月3日)(AERA)
「菅義偉首相が連日、檄を飛ばしている。
「7月末までに高齢者のワクチン接種を終わらせろ」
そのとばっちりを受けているのが、武田良太総務相だという。
「これまでワクチン接種は、田村厚生労働相や河野ワクチン担当大臣が中心だった。しかし、スピードが遅く、なかなか進まない。菅首相の“ポチ”と言われる武田大臣が呼ばれ、『とにかくワクチンを打ちまくれ』『何とかしろ』と厳命されたので、あたふたしています」(総務省関係者)
しかし、現実は厳しい。厚労省が4月末、全国の地方自治体に内々で調査したところ、1741の市町村のうち6割以上の1100の自治体が「7月中に高齢者のワクチン接種完了はできない」と回答している。」
総務省関係者がこう明かす。
「厚労省調査に対し、『7月中には終わらない』と回答した市町村にはローラー作戦で電話をかけまくり、カネ(財源措置)というニンジンにぶら下げながら、『7月中に接種が終わるような接種計画だけでも作ってくれ』、そして7月中は無理という回答だけでも『撤回・修正してくれ』という上意下達の指示を出しています。都道府県の副知事や市町村の幹部に直談判しようと、出向している官僚をリストアップ。官邸の意向がダイレクトに伝わるよう訴えています」
「九州地方の市長はAERAdot.の取材に対し、総務省のローラ作戦を認めた上で、呆れながらこう明かした。
「総務省から何度か連絡がきています。菅首相が7月末と国民に約束したから至上命題と言ってきた。しかし、ワクチンは届きません。うちのような田舎町だと、医療従事者の確保もそう簡単に確保できません。そこを説明すると、ガッツと気迫で頑張ってくれと精神論のようなことを担当者は言っていました。連休明けには7月末にできるか、回答してくれと言っていたが、要は連休も働けと強要しているようなもの。ワクチンも届かない状態でどうしろと言うのか。官僚ってどうしてこんなバカなことを言うんですかね。ガッツと気迫でコロナを克服できるわけありません」」
「「菅首相は今や官邸で『裸の王様』状態。自分が直々に指示したんだから7月末までに高齢者接種は可能と思い込んでいる。コロナ感染拡大が収まらなくても、ワクチン接種が進めば、緊急事態宣言の早期解除と東京五輪開催の両立は可能と本気で考えているようです」(政府関係者)」
自衛隊「大規模接種センター」も、実際は民間人材をかきあつめてやるようです。
【独自】高齢者1万人「接種センター」 日本旅行、人材派遣会社に約37億円で自衛隊が“丸投げ”
「3カ月間で東京が計90万人、大阪は計45万人の接種を見込み、接種センターは土日祝日を含めて自衛隊が運営し、医官約70人、看護官約200人を全国の自衛隊病院や部隊から集めて東京と大阪の会場に派遣するなどと報道されている。
しかし、これには“カラクリ”があった。防衛省関係者はこう説明する。
「自衛隊の看護官の人数が圧倒的に足りないので、外注する形で集めることになったんです。菅首相がワクチン接種は『自衛隊がやる』と宣言はしたものの、結局は民間看護師、しかも非正規雇用の方を大量動員してやっつけで進めるしかなかったということです。この計画は菅首相の側近の和泉首相補佐官らが主導し、詳細を詰めぬまま、メディアに大々的にぶち上げられました。だが、ワクチンを所管する厚生労働省や内閣府、内閣官房などには何のノウハウもなく、困り果てていた。自衛隊に押し付ける形になりましたが、結局、看護師派遣や接種会場の受付などロジも含めて人材派遣会社、日本旅行、東武トップツアーズなどに約37億円で”丸投げ”となりました」」
ネットで話題になっているようですが、世田谷区長がツイッターで、ワクチンの消費期限についてふれています。
https://twitter.com/hosakanobuto/status/1390803917013872644
万一、消費期限切れワクチンが大量に発生したら、日本国内の感染終息がそれだけ遅れる、税金の無駄遣いというだけでなく、国際問題になるのでは。
ワクチン接種完了、日本到着分の15%止まり ロイター通信「遅い」(毎日)
「ロイター通信は7日、日本国内に到着した新型コロナウイルスワクチンは2800万回分に達したが、接種が完了したのは15%程度の400万回超で、約2400万回分が「(接種を担当する)人手や手配上のボトルネック」によって使われないまま残っており、接種ペースは「遅いままだ」などと批判的に報じた。」
日本のマスコミは、なぜ批判しないのでしょうか。
首相はアメリカまで行って、早くワクチンをよこせと、ファイザーのCEOに直談判(といっても電話ですが)していましたが、もし、在庫が十分にあったのだとすれば、見当外れの努力をしていた、そのかわり、肝心な問題に気付いていなかったということになるのでしょう。
ワクチン追加供給を 訪米中の菅首相が電話でファイザーに要請(4月18日)(NHK)
「ワシントンを訪れている菅総理大臣は、アメリカの製薬大手、ファイザーのブーラCEOと電話で会談し、新型コロナウイルスのワクチンについて、ことし9月までに国内のすべての接種対象者に必要な数量を確保したいとして、追加の供給を要請しました。」
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