日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会実務指針第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」の改正を、2012年2月14日付で公表しました。
平成23年度税制改正において、減価償却資産に係る定率法の償却率の見直しが行われたことに対応するための見直しを行っています。
「平成23年度税制改正大綱」(2010年12月に公表)を反映させた改正案がいったん公表されていましたが、法律改正が先送りになったため、「監査上の取扱い」の方も先送りになっていました(過年度遡及会計基準等の対応のみを反映した見直しを昨年4月に実施済み)。
今回の改正で、あらためて税制改正を反映させたことになります。
改正された報告書では「平成23年度税制改正に係る監査上の取扱い」という項目が新たに設けられ、平成23年度税制改正と減価償却方法に係る基本的な考え方が説明され、新規取得資産と既存資産に分けて、減価償却方法の選択について議論しています。
報告書によると、減価償却方法選択のパターンは、以下の表のとおりです。
これらのうち、「法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更」として認められるのは、以下のような限られた場合だけです。
「従来、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理している企業において、既存資産のうち平成19 年3月31 日以前に取得した減価償却資産がある場合に当該資産に旧定率法を採用し、かつ平成19 年4月1日以後取得した減価償却資産がある場合に当該資産に定率法(250%定率法)を採用していたときに、新規取得資産について(B)の定率法(200%定率法)を採用する場合には、同一種類で同一用途の資産について、類似の減価償却方法を採用するものと認められるため、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更として取り扱う。」(49項)
今回の税制改正では、既存資産の減価償却方法は、企業の選択により、一定の届出を行って、定率法(250%定率法)から定率法(200%定率法)へ変更することができるとされています。しかし、このような変更も含め、、既存資産について減価償却方法を変更する場合には、会計上、法令等の改正に伴う変更に準じた会計方針の変更とは認められません(52項)。変更する場合には、変更理由の合理性に留意が必要であるとされています(53項)。
(償却率の変更は、本来、会計方針の変更ではなく、会計上の見積りの変更であるといえます(耐用年数を延ばしたのと同じ)。しかし、そのように割り切って考えると、税制改正をきっかけとした償却率の変更の理由づけが難しくなります。そこで、税法に基づいて減価償却を行うことも一つの会計方針だという考え方(以前からある考え方だと思います)を採用して、税制改正による償却率の変更は「法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更」だから認められるという理屈になっているようです。しかし、そういう考え方自体、便利ではあるものの、耐用年数が来ているような感じもします。)
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