会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

監査法人アヴァンティアに対する検査結果に基づく勧告について(金融庁)

監査法人アヴァンティアに対する検査結果に基づく勧告について(PDFファイル)

金融庁の公認会計士・監査審査会は、監査法人アヴァンティアを検査した結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対して行政処分その他の措置を講ずるよう、金融庁長官に2018年5月18日付で勧告しました。

(「運営が著しく不当」というのは決まり文句です。)

以下のような指摘がなされています(一部抜粋)。前回の審査会検査において指摘された事項の改善が不十分とされ、厳しい結論になったようです。

「不備の原因を十分に分析しないまま改善措置を講じている。」

「法人代表は、品質管理業務への関与が低く、品質管理の改善を品質管理部長に一任しているため、品質管理態勢が実効的なものとなっていないことを把握していない。」

「品質管理部長は、監査契約の新規受嘱等に時間をかけ、品質管理業務に十分に関与していない。また、改善措置を講じるに当たって不備の原因を十分に分析していないため、改善策は対症療法的なものとなっており、個々の監査業務に依然として不備が多く生じている状況を放置している。 」

「法人代表及び品質管理部長は、監査業務を実施する上で必要な適性や能力を有する監査実施者を十分に確保できていないにもかかわらず、リスクが高い会社の監査業務の新規契約を複数締結し、法人の業務拡大を先行させている。」

「品質管理部長は、自らが関与する監査業務や審査等を通じて、監査補助者の職業的懐疑心が不足していることを把握していたにもかかわらず、そのような状況を法人全体の品質管理態勢の問題として捉えていない。」

「品質管理部長を補佐するために配置された社員2名は、いずれも品質管理業務に関与する時間がとれる状況になく、監査チームにおける監査の品質に係るモニタリングが実施できていないなど、品質管理部は十分に機能していない。 」

「監査契約の新規受嘱を申請する業務執行社員予定者及び新規受嘱の承認を行う社員会のメンバーは、不正により決算を訂正している会社や内部統制上の不備を開示している会社など、リスクが高い会社の監査契約の新規受嘱にもかかわらず、考慮すべきリスク要因に対して十分かつ適切なリスク評価を実施していない。」

「リスクが高い会社の監査業務において、業務執行社員に主査を兼務させることで着手したものや、監査補助者の多くが新規採用者や新規契約した非常勤職員で構成されているものがみられる。」

「業務執行社員は、監査補助者の能力を適切に把握することなく、監査補助者に監査業務を任せ、適切な指示、監督及び監査調書の査閲を実施していない。 」

定期的な検証の担当社員は、監査チームからの説明を受けるのみで監査調書を直接確認していないため、重要な構成単位の実証手続や、特別な検討を必要とするリスクとして識別した関係会社株式及びのれんの評価等において重要な不備を看過しているなど、その職責を果たしていない。」

「法人代表及び品質管理部長を含む業務執行社員及び監査補助者は、会計及び監査の基準の理解並びに職業的懐疑心が不足している。」(個別監査業務における具体的な不備事項を多数列挙)

新規監査契約が取れてから、人集め(非常勤主体)をするというのは、事務所経営的には合理的なのでしょうが、やりすぎると品質管理的にはまずいのでしょう。人手不足状況だけになおさらです。

アヴァンティアからはプレスリリースが出ています。

公認会計士・監査審査会による処分勧告について(監査法人アヴァンティア)

「当法人としましては、今回の事態を厳粛に受け止めるとともに、今後も適正規模の中堅監査法人としての社会的役割を適切に果たしていくため、さらなる成長の一里塚と前向きに捉え、高い専門性をより磨いてより社会に貢献することができるよう、法人一丸となって邁進する所存です。」

公認会計士・監査審査会、アヴァンティアへの行政処分を勧告(日経)

「アヴァンティアは現在、東証1部に上場するアイロムグループ(2372)やアゴーラ・ホスピタリティー・グループ(9704)、メンバーズ(2130)など上場企業21社の監査を手掛けている。」

4344993578監査法人の原点 [改訂版]
小笠原 直
幻冬舎 2016-07-10

by G-Tools


「中央青山監査法人の一連の不祥事以降、監査業界は保守的になり、リスクをとらない公認会計士が増えてしまいました。

このことを著者は、公認会計士の職業的危機であると嘆きます。

中堅監査法人を設立した著者が、危機感の薄い監査業界に向け、未来の会計士と監査法人のあるべき姿を提示した渾身の一冊。」

コメント一覧

AY
証券取引等監視委員会の東芝の処分や公認会計士・審査会の公認会計士・監査法人の処分が裁量で行われている感がある。同様にアバンティア監査法人への処分も裁量で行われている感は拭えない。
こんなことが続けば優秀な人材が集まらなくなる恐れがある。
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