株主総会は有報開示の後で 三井千絵氏(記事冒頭のみ)
岸田首相が有報開示時期を株主総会前にするための環境整備を行うと表明したことを受けて、有報を早くするというより、株主総会を有報開示の後にすると考えてはどうかというコラム記事。
「4月上旬、岸田文雄首相は、海外投資家と対談を行うと、有価証券報告書(有報)の開示時期を株主総会前にするための環境整備を検討すると表明した。これまでも、他国と異なる有報の開示時期は指摘されてきたが、慣習を変えることには企業だけでなく、機関投資家の側にも抵抗がある。」
日本は会計期末から株主総会までの期間が他国に比べて短い、4か月目以降の株主総会開催となっている国も多い、総会前提出といっても、総会の少なくとも3週間前に有報提出できないと、逆に総会を遅らせる検討を行った方がよい(十分な時間をとり有報の情報を活用してこそ株主との有益な対話にもつながる)といった内容です。
首相がそういう発言をした以上、いくら実行力がなくても、何らかの検討は行われるのでしょうが、会社としては、総会前に有報のような詳しい情報を開示して、それをもとに、総会で株主からいやな質問を受けるような事態は避けたいでしょうから、総会前提出を推奨するぐらいでは効果はないかもしれません。
本筋から外れますが、総会後有報提出に関し、監査手続的に疑問に感じるのが、経営者確認書です。総会後有報提出で、監査報告書も総会以後の日付の場合、総会で交代後の経営者が経営者確認書にサインすることになります。実質的に有報記載の財務諸表に責任を負うのは、交代前の経営者のはずですが、監査報告書日付で確認書をもらうことになっているので、そうなります。有価証券報告書の記載内容の適正性に関する確認を、有報提出時の経営者(総会後の提出であれば総会で交代後の経営者)が行うというのも、あまりにも形式的ですが、確認を行った経営者が責任を問われるということもないので、それで通っているのでしょう。
また、総会開催時期を遅らせるという案については、監査人交代時に、後任の選任時期が遅れてしまうという問題(第1四半期レビューが任意になったので弊害は小さくなってはいますが)の解決策も考えてほしいものです(→当サイトの関連記事)。