ハイアス・アンド・カンパニー(東証1部)のプレスリリース。
過去の不適切な会計処理の事実関係について、第三者委員会より最終調査報告書の公表版を受領したとのことです。
添付されている報告書は、170ページほどもある超大作です。
とても短時間で読み切れる分量ではありませんが、斜め読みすると、ある会計士が不正に深く関わっていたようです。
「2014 年 11 月の X1 社及び X2 社に係る取引と X4 社及び X5 社に係る取引において、返金を前提とした実態のない取引による売上計上スキームが敢行された要因の一つとして、外部専門家の公認会計士である人物が関与したことが挙げられる。
大手監査法人出身の当該公認会計士は、財務報告に係る内部統制構築のアドバイザーとして起用され、その専門的知見を提供して内部統制の構築に貢献し、当社の経営陣から、また上場準備業務や主幹事証券会社対応を担当していた財務経理部次長(後に部長)から、厚い信頼を得るに至った。
しかし、財務経理部次長が役員から指示を受けて上記の売上計上スキームを作ることになった際に、相談を持ち掛けられた当該公認会計士は、職業倫理あるいはゲートキーパー機能を発揮してこれを止めるよう進言するのとは真逆に、なるべく監査法人に見つからないような巧妙なスキーム作りに自らの専門的知見を提供し、果ては自分が経営する会社を返金スキームに介在させるところまで手を貸し、自ら報酬も得ている。この売上計上スキームの完成に、公認会計士が果たした役割は大きい。
この時の状況を当委員会に対して説明する際に、当該公認会計士は「実験室」のようだったと述べた。様々な試作と検証を繰り返して完成に漕ぎ着けた様を表現する言葉ではあるものの、そこには、自分の行動が、当社に対して、ひいては証券市場に対して、どれだけの悪影響を及ぼすのかという思考の欠片も感じられなかった。」(報告書87ページ)
クライアント・ファーストが行きすぎてしまったのでしょうか。結局、会社の信用は落ち、社長らは退任させられてしまいました。第三者委員会にはおそらく、利益水増し金額よりもはるかに大きい報酬を支払うことになります。
前期(2020年4月期)は、あずさ監査法人から意見不表明の監査意見が表明されましたが、当期は、監査法人アリアに監査人が交代し、2021年4月期第1四半期は、限定付結論とのことです。
四半期レビュー報告書の限定付結論に関するお知らせ(PDFファイル)
「四半期レビュー報告書の内容」の引用より。
「当監査法人は、前任監査人の指摘を踏まえ、期首残高含めた当連結会計年度の第1四半期の四半期連結財務諸表についての潜在的な虚偽表示の存否を検討するために、第三者調査委員会の調査や前任監査人の監査状況を検討の上、追加的手続を実施した。
当第 1 四半期連結会計期間においては、前任監査人の意見不表明の原因となった経営者が職務を執行していたため、経営者の誠実性に関する質的に重要性のある監査上の制約が存在したと考えられるが、2020 年 9 月 30 日付の経営者の交代により当該制約の解消が図られており、かつ、経営の信頼を回復するための経営体制やガバナンスの改革も進めており、現時点では、当連結会計年度の財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要かつ広範ではなくなったと判断している。また、第三者委員会の調査や前任監査人の監査での検討結果を踏まえて、当監査法人で実施した追加的手続の結果、期首残高含めた当連結会計年度の第1四半期の四半期連結財務諸表について重要な虚偽表示が発見されなかった。
当監査法人は、これら検討の結果、期首残高含めた当連結会計年度の第1四半期の四半期連結財務諸表について、上記の制約に関連する未発見の虚偽表示の影響の広範性はないと判断できたが、当四半期の数値と対応数値に及ぼす可能性のある影響があるため、当連結会計年度の第 1四半期連結会計期間及び第1四半期連結累計期間の四半期連結財務諸表に対して限定付結論を表明することとした。」
悪い経営者が交代したから、監査上の制約がなくなった、だから意見(結論)の表明は可能という判断のようです。
そして、期首残高と第1四半期連結財務諸表は問題なかったが、比較情報である前期の数字が確かめられないので、その部分に限定をつけたということなのでしょうか。
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