会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

第三者委員会について考える-「『第三者委員会』の欺瞞」での論点を中心に(経済産業研究所より)

第三者委員会について考える-「『第三者委員会』の欺瞞」での論点を中心に

あの八田教授の講演録(質疑応答含む)。

第三者委員会についてかたっています。

内容は八田教授の従来からの主張ですが、少し気になった部分を抜粋します。


「会計の立場から第三者委員会の報告書や構成員を見ると、不適切会計の処理なのに第三者委員会のメンバーに会計の専門家がいない。これでは、報告書が依頼側の法人の意に即する形でまとめられてしまい、ただの「禊(みそぎ)のツール」「隠れ蓑」になっているのではないか、と疑念を抱いておりました。」

「公共性の高い事案においては透明性が最も重視されます。会社が不祥事を起こした際には第三者の力を借りて作業をするわけですから、当然一定の報酬が払われます。その報酬は一体どの程度のものなのか。とりわけ企業価値を毀損してしまった不祥事企業においてはさらに追加的なコストがかかります。

仄聞するところでは、どんな小さな第三者委員会であっても活動全体にかかるコストは億円単位だろうといわれています。特に有名企業の巨額の不祥事問題に関しては、二桁以上の億円に及ぶ金額が動いています。株主を中心としたステークホルダーの利益を毀損しているのに、この第三者委員会のコストに関する情報はまったく開示されていません。」

第三者委員会は日本特有の体制です。1997年に山一證券が破綻し、不祥事の問題解明を目的に社内調査委員会が立ち上げられました。外部の弁護士2名による第三者の視点を入れて、翌年には簿外負債に関する社内調査報告書を公表しました。

企業の最終責任としての自浄作用を発揮し、多くのステークホルダーに対して然るべき説明責任を履行したことから、この報告書は非常に高く評価されました。そしてこの社内調査委員会が、後の第三者委員会的に発展したわけです。」

「第三者委員会設置時の開示においては、委員の選任プロセス、選任理由、適格性、調査目的も併せて公表すべきですし、報酬に関しても、補助者の報酬も含めた第三者委員会の活動費用を示すことが重要です。さらに依頼者である企業と第三者委員会委員のその後の取引関係も検証し、これらの開示内容を有価証券報告書に記載するよう要請すべきです。」

「Q:
第三者委員会は欧米でも設置されますが、欧米では報告書が公開されないと聞いたことがあります。その理由についてお聞かせください。

A:
少なくとも私が調べている限り、海外で日本のように外部の者を入れた第三者委員会の設置例はゼロではないと聞いていますが、あまりないと思います。欧米の上場会社では社外役員の独立委員会を立ち上げて、社外独立役員委員会が外部の検証機関や関係当局の援助を受けて、社内的に公表するのが一般的のようであります。

また、訴訟の法制度が国ごとに異なり、秘匿特権(情報開示を拒否できる権利)が定められているため、あまり外部には公表しないようです。従って第三者委員会はまさに日本型の体制であると私どもは理解しています。」

講演テーマが「第三者委員会」なので、第三者委員会に対する批判が中心なのはしかたがないのでしょうが、そもそも、有名な事件でも、日産ゴーン事件のように第三者委員会を設置せずに、身内だけで調査し、ろくな開示を行っていない例もあります(そのかわりマスコミへのリークはし放題だった)。東芝でも、虚偽記載として行政からの処分対象となった件については、第三者委員会の調査を行ったものの、米国原発建設事業で巨額の損失を出し、監査人が結論不表明あるいは限定付適正の監査(四半期レビュー)報告書を提出した件については、監査法人という専門家の指摘した不正疑惑であるにもかかわらず、完全に無視し、独立した調査は行われませんでした。

もちろん、第三者委員会の改善を求める提言をするのは立派なことだと思いますが、会社が第三者委員会を設けてきちんと対応しているという姿勢を見せる方が、外部からの調査を行わないのより、まだましのように思われます。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事