株主総会の延期の問題を、配当決定プロセス(総会で決めるか取締役会で決めるか)とからめて取り上げている記事。
「新型コロナウイルスの影響で企業が株主総会の延期を検討する動きが、配当を決めるプロセスに波紋を投じている。総会で配当を決める企業は、権利の基準日も遅れるため投資家から信頼を失うとして延期に二の足を踏む。取締役会で決める企業は延期が比較的容易だが、「株主の権利である配当を会社側が決めていいのか」という問題がつきまとう。」
取締役会で配当を決定する仕組みについて。
「...2005年の現在の会社法制定の際、一定条件のもと定款に取締役会でも配当を決められると定めれば、総会を経ず会社側が決定できるようになった。
この仕組みならば総会を7月以降に延期しても6月までに取締役会で配当を決めればいいため、配当の基準日はずらす必要がなくなる。東芝は総会を7月以降にずらす一方、配当の基準日は3月末で据え置いた。スカパーJSATホールディングスや日立製作所なども配当基準日を変えず総会延期を決めた。
ただ、会社法の規定上、総会で議決権を行使できる基準日は総会まで3カ月以内になるよう遅らせる必要がある。配当の基準日と議決権の基準日がずれるわけだ。」
しかし、総会で決定する企業が多数派とのことです。
「企業の法務担当者でつくる東京株式懇話会が19年に上場1307社を対象に調査したところ、定款で配当を「総会のみで決める」のは40%強で、「取締役のみで決める」の29%を上回った。
取締役会、総会の「どちらでも決められる」とする企業も28%あったが、このうち8割近くが実際には総会で決めており、総会で決める企業がなお多数派だ。配当の決定が「総会の本質と捉えられてきた」(大和総研の横山淳主任研究員)からだ。
任天堂の06年の総会では配当の決定権を取締役会に移す議案が否決された。みずほフィナンシャルグループは配当を取締役会のみで決めるが、総会に配当決定権を持たせることを求める株主提案が15~17年に提出された。賛成が48%に達したこともある。」
決算(配当財源を確定する意味がある)と配当の承認は、株主総会の権限だという考え方が、法律の規定上も、株主の意識のうえでも、原則になってしまっているのでしょう(決算は承認不要で報告だけとか、配当は取締役会で決めるとかはあくまで例外)。
記事によれば「必ずしも配当の決定が総会の本質というわけではないとの見方もある」のだそうです。
東京大学の田中教授のコメント。
↓
決算確定せぬなら延期を 東京大学教授 田中亘氏(日経)(記事冒頭のみ)
「監査を受けた信頼性のある決算書類を出せないなら、6月の株主総会を7月以降に延ばすのが最も簡明だ。」
継続会には否定的です。
「今回は、そもそも決算が確定せず、総会の招集通知に計算数値を添付できないという事態だ。継続会ではなく、やはり総会の日程を遅らせようと考えるのが筋だ。
役員の選任も、確定した決算で経営成績を判断し、次の役員が相当かを判断するものだろう。」
決算や総会のスケジュールにもふれています。
「日本は3月末の基準日と6月総会にこだわるあまり、非常にタイトな日程で苦労している。有価証券報告書を踏まえた審議もできない。基準日をずらし、7月以降の総会開催を考えるときだ。」
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