会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

10万円、何度も申請できちゃう?本末転倒のオンライン(朝日より)

10万円、何度も申請できちゃう?本末転倒のオンライン(記事前半のみ)

1人10万円を配る「特別定額給付金」のオンライン申請をめぐり、窓口となる市区町村で混乱が起きているという記事。オンライン申請の仕組みの欠陥により、市区町村では、郵送による手続より、手間がかかっていて、本末転倒になっているそうです。

「オンライン申請は、内閣府が運営する「マイナポータル」サイト内にある給付金用の申請ページを通じて、自分が暮らす自治体に世帯ごとに申し込む仕組みだ。申請の際には世帯主の本人確認のためにマイナンバーカードが必要で、世帯主以外の家族の名前は申請者が直接入力する。」

世田谷区の例を紹介しています。

「マイナポータルでの申請データを確認すると、1人で複数回申請したり、家族の情報を誤って入力していたりしても、受け付けられてしまうことが分かった。そのまま給付すると過払いになりかねない。

対象者に正しく支給するには、世帯情報をまとめる住民基本台帳ネットワークの情報と申請時に入力された情報との照合が必要だ。世帯情報は自治体だけが持っているため、申請内容が正しいかどうか、職員が1件ずつ確認している。区は担当する職員を急きょ増やして対応する計画だが、郵送申請以上に時間と手間がかかり、郵送よりも給付が遅れる恐れもあるという。

保坂展人区長は「人海戦術による突合(とつごう)(照合)で苦慮している。電子申請のほうが郵送申請の処理より何倍も手間がかかるという本末転倒の状態。自治体の現場をまったく踏まえない仕組みだ」と嘆く。」

郵送の方は、住民基本台帳に基づいて世帯ごとの必要情報を印刷済みの申請用紙を住民(世帯主)に送付し、住民は、振込先口座番号を記入して返送するだけですから、口座番号の記入誤り以外は、ミスが生じない仕組みなのでしょう。住民基本台帳自体に間違いがある可能性はありますが、それはどんな申請方法でも回避できません。

それに対して、オンラインの方は、申請自体は簡単だとしても、記事によれば、いちいち、市区町村で住民基本台帳と突き合わせしないといけないそうですから、全体としてみれば、全然合理化になっていません。なんでもかんでもオンラインにすればいいというものではないのでしょう。(マイナンバーカードを使わせようというような不純な動機があったのでは)

必要事項が住民基本台帳から自働転記され、チェックが不要になるようなオンライン申請の仕組みを、各自治体が個別であるいは複数の自治体で作ればよいのでしょう(下の東洋経済の記事では、自治体にそんな余裕はないとのことですが)。

さらに詳しい記事。

給付金で大混乱「市役所窓口」のヤバすぎる内情
現場で起こる"3つの問題"に職員は怒り心頭
(東洋経済)

「5月1日に国が1人当たり一律10万円を支給する「特別定額給付金」のオンライン申請の受付が始まって2週間。全国の自治体が大混乱に陥っている。

起きている問題は主に3点。第1に、自治体の窓口に人が押し寄せて、対応する職員が疲弊している。第2に、オンライン申請を受け付ける「情報提供等記録開示システム」(通称マイナポータル)でシステム障害が多発している。第3に、申請内容に大量の不備が見つかっている、である。」

「マイナポータルは単純に申請を受け付けるだけで、申請者が入力した情報は何のチェックもかからず、そのまま自治体に転送される。

このため、マイナポータルでの申請は、システム障害さえ起きなければ同一人物が何度やっても受け付けられる。世帯主以外は本来申請する資格がないのに、申請者が世帯主かどうかの判定すらしない。否、判定できないのだ。

自治体ではマイナポータルから転送されてくる情報を紙に出力し、職員が住民基本台帳システムなどを使い、手作業で記載内容に間違いがないかや、必要書類が整っているかなどをチェックする。修正や必要書類の提出依頼は、職員が申請者に電話をかけて行っている。その手間暇は尋常ではない。

実は、冒頭の地方自治体職員が最も怒っているのも、この点なのだ。マイナポータルが申請を受け付けた情報を、住民基本台帳システムと連携させることができれば、確認作業の負担は大幅に軽減されるはずなのに、それができないのである。」
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