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見落とされたマザーズ上場企業の「粉飾決算」…責任はみずほ証券だけのものか(現代ビジネスより)

見落とされたマザーズ上場企業の「粉飾決算」…責任はみずほ証券だけのものか

「エフオーアイ」の粉飾決算事件に関連して、上場主幹事を務めたみずほ証券の損害賠償責任が最高裁で認められたことについて解説した記事。

みずほ証券の責任は当然だとしつつ、会計士や東証の責任も問うています。

「裁判は、主に個人投資家ら208人が起こしたものだ。東京地裁の1審では、エフオーアイの役員、監査証明をした公認会計士、引受主幹事(旧みずほインベスターズ証券、現みずほ証券)を含む引受証券会社、上場時にエフオーアイ株を売り出したベンチャーキャピタル、そして上場したマザーズ市場を持つ東京証券取引所と、金融商品取引法に照らして粉飾決算事件で投資家に対する賠償責任を負う可能性のある組織や個人のほぼすべてが被告とされた。」

「このうち1審判決が賠償責任を認めたのは、粉飾の張本人であるエフオーアイの役員らと、それを見抜けなかったみずほ証券だ。

粉飾を見抜けなかったという問題は、公認会計士と東京証券取引所にもあったが、会計士は計上された売り上げについて海外の取引先への反面調査を試みていること、東証は2度の粉飾決算の存在を告発する投書についての裏付け調査を試みていることなどから免責された。

一方、みずほ証券は東証と同様に2度投書を受け取っていたにもかかわらず、その調査が生温かったことから賠償責任を免れないと判断されたのである。」

証券会社の責任については...

「市場関係者は、単に企業が犯してしまった粉飾を見破るだけでなく、もっと早い段階から企業と経営者が間違っても粉飾に手を染めるようなことをしないようにきちんと経営を指導・教育することを期待して、その対価として上場や増資の主幹事証券が手数料を取得することを認めているのだ。

実際、バブル経済の崩壊以前は、筆者が取材をしていても、野村、大和、日興、山一の4大証券が数年をかけてこうした上場指導を徹底する場面によく出くわしたものだ。ところが、2000年代半ば以降、外資系、銀行系、ネット系の証券会社が大手の壁を切り崩し、主幹事案件を頻繁に獲得するようにつれて、杜撰な引受審査を耳にすることが増えてきた。

そして、今なお各社の引受審査体制が十分とは言えない状況が続いているだけに、今回の判決は各社が信頼回復の端緒にすべき判例と言える。」

東証や会計士を批判している部分。

「話をエフオーアイに戻すと、118億円のうち115億円が架空の売り上げだったのだから、異常な規模の粉飾決算で、決算書にはそのひずみがはっきりと浮き彫りになっていた。架空売り上げなので代金が支払われず、売掛金が膨れ上がっていたのだ。

エフオーアイの2009年3月期の売掛金は228億9595万円と実に売上高の1.93倍に達していた。また、同社の売掛金の回収までの滞留期間も633日と2年近くに及び、同業の東京エレクトロンの100日前後に比べて極端に長かった。

プロの公認会計士や東証の上場審査担当者ならば、机上で、こうしたデータを見ただけでも、不自然さに気付いて架空の売り上げが長年計上されているのではないかとの疑いを持つのが当然のケースと言えるだろう。

当時の報道や裁判の審理によると、1審では、公認会計士がエフォーアイの取引先への半面調査を試みたと評価している。しかし、実際に公認会計士が面談したのは、ニセの相手先企業担当者や通訳で、そうした面談のアレンジはエフオーアイ任せだったという。公認会計士が自ら能動的に取引先企業に面談する努力をしていれば、売り上げが架空であることがあっさり見破れたのではないかと疑わざるを得ない。」

書面による残高確認は別として、会計監査で取引先に反面調査まで行うのはまれでしょう。監査人は、売掛金の滞留日数の異常には当然気がついていて、そのリスク対応として、反面調査までやったのでしょうが、会社の方が1枚上手だったのでしょう。(それとも、徹底的に手続をやったというアリバイづくりにすぎなかったのか...)

また、監査人にとっては、「無限定適正」が事実上のデフォルト(初期設定)なので、それなりのリスク対応手続をやって一応問題が解決した場合に、それでも、完全には納得がいかないから意見を出さないというわけにはいかないという弱みもあるのでしょう。

東証の姿勢について。

「東証で気掛かりなのは、粉飾決算の発覚当時の斉藤惇社長が記者会見で、「上場から半年でこうした事態が発生したことを重く受け止める」と述べる一方で、「東証としてできることはやった」と責任を公認会計士や引受証券会社に転嫁する姿勢を見せたことだ。

投資家は、東証が審査のうえで企業の上場を認め、東証の情報開示システム上で企業に情報開示をさせているのだから、当然、企業が開示した情報にも東証がお墨付きを与えたと見なしているはずである。

中には上場企業への直接的調査が十分できないケースもあるかもしれないが、エフオーアイのケースを見る限り、公認会計士や引受証券会社の調査内容をきちんと把握して、その甘さに気付いていれば、両者に再調査を依頼するなどもっと適切な対応ができたことは明らかである。当時の社長発言は、東証の社長らしからぬ無責任の極みと言わざるを得ない。」

東証と証券会社と監査人が、内部通報についてもっと情報交換をしていれば、別の結果になったかもしれません。
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