公正取引委員会が、キヤノンによる東芝医療機器子会社の買収を認めたという記事。ただし、買収スキームが脱法的だとして、キヤノンに注意を与えたそうです。
「経営再建中の東芝は3月、東芝メディカルの株式をキヤノンに約6655億円で売却する契約を結び、キヤノンから全額の支払いを受けて、一時的な受け皿会社であるMSホールディングに株式を売却した、と発表した。キヤノンは東芝に入金し、東芝が2016年3月期決算に東芝メディカルの売却益(3817億円)を計上できる見通しがついた後、公取委に一連の手続きについて届け出た。
独禁法は、買収の当事者企業が一定規模以上の場合などに、事前に公取委に計画を届け出ることを義務づけており、届け出から原則30日間は買収手続きを進められない。公取委はキヤノンの届け出のタイミングを問題視。東芝メディカル株がMSホールディングに譲渡された時点で、実質的に東芝とキヤノンの間で売買が成立していた可能性があり、それ以前に届け出る必要があったと指摘した。」
「公取委の聞き取りに対し、両社とも「東芝の債務超過を回避することが目的だった」と説明したという。担当者は会見で「事前届け出制度の趣旨を逸脱し、独禁法違反につながるおそれがある」との認識を示した。」
公取委の見解がそのまま会計基準を適用する際の指針になるわけではありませんが、仮に、会計処理にも当てはまるとすれば、東芝から受け皿会社への株式の譲渡時点で、キヤノンへの売却が成立していたことになり、東芝が2016年3月期に子会社売却益を計上したのは、それなりの理屈があったということになるのかもしれません。
キヤノン側の会計処理(米国基準)は...
四半期報告書(2016年1~3月)(キヤノン)(PDFファイル)
キヤノンが出した資金は投資に計上されているようです(キヤノンは12月決算)。
「2016年3月17日に、当社は東芝メディカルシステムズ株式会社(以下、「TMSC」という。)の全普通株式を取得する権利を665,498百万円で取得しました。TMSCの株式の取得は、所要の競争規制当局のクリアランスを得ることが条件となっております。当該権利の取得に関連して、TMSCは基準書810「連結」に規定される変動持分事業体になると考えられます。また、当社はTMSCの重要な資本構成の変更を拒否する権利を含む一定の防衛的権利を有しております。しかしながら、当該権利や関連する契約上、当社は所要の競争規制当局のクリアランスが得られるまで、TMSCの活動を指図するパワーやTMSCに対して重要な影響力を行使することはできません。
従って、2016年3月31日現在において、TMSCに対する投資を原価法により評価し、連結貸借対照表の投資に含めております。2016年3月31日現在、当該権利に関連して発生する可能性のある損失額は、この投資の取得価額に限定されております。2016年3月31日現在におけるこの投資の公正価値は取得原価に近似しております。」(四半期財務諸表注記より)
所要の競争規制当局のクリアランス(具体的には公取委の承認)が得られるまでは、防衛的権利(あまりなじみのない言葉です)はあるけれども、支配力も影響力もないということで、連結子会社や関連会社にはせずに、原価法で計上していたということになります。
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