金融庁の金融審議会が、上場企業のコーポレートガバナンス強化に関する報告案をまとめたという記事。
「企業が取引先などの特定者に、新株の引き受け権を与えて資本調達する第三者割当増資は、経営陣が株主の意思を直接確認せずに決定できるため、株主にとって不公正な事例がでている。報告案は、割当先との関係などを詳細に開示させるよう求めており、不正行為に対しては、罰則規定を設けるよう促した。」
「社外取締役の義務化は、経済産業省の企業統治研究会が、社外取締役を置くか別の対策をとるかの「選択制」を提言したことに足並みをそろえ、見送った。・・・」
第23回我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ議事次第(金融庁ホームページより)
金融庁ホームページに掲載されている報告書案をみると、記事で取り上げられている以外にも会計がらみの提言がなされています。
「・・・上場会社等においては、監査役の機能強化の観点から、
1)監査役監査を支える人材・体制の確保(このための内部監査・内部統制部門との連携)
2)独立性の高い社外監査役の選任
3)財務・会計に関する知見を有する監査役の選任
等の措置が講じられていくことが望まれるところであり、取引所においては、上場会社によるこれらの取組みの促進を図るべく、これらを望ましい事項と位置づけるとともに、各上場会社の取組み状況についての開示の枠組み等を整備していくことが適当である。」
監査法人を退職したパートナーの就職先が増えるということでしょうか。しかし、将来的にIFRSを知らないと「財務・会計に関する知見を有する」とみなされなくなるとしたら、ハードルは高いかもしれません。
「インセンティブのねじれを解消し、財務情報の適正性の確保及び監査人と監査役との連携を強化する観点から、監査人の選任議案・報酬の決定権を監査役の権限とする(委員会設置会社については報酬の決定権を監査委員会の権限とする)ことが提言され、関係当局における早急かつ真剣な検討が求められてきた。この際、実務の状況を踏まえつつ、検討の促進を求めたい。」
あまり積極的な書き方ではありません。会社法マターだからでしょうか。
「役員報酬については、経営者のインセンティブ構造等の観点から株主や投資者にとって重要な情報であると考えられ、また、非常に高額な報酬やストックオプションが経営者の経営姿勢を過度に短期的なものとするおそれなどの指摘もある。したがって、役員報酬の決定方針が定められている場合にはその開示を求めていくとともにストックオプションなども含めた報酬の種類別内訳についても開示を求めるなど報酬の開示の充実が図られるべきである。」
「株主・投資者に対する経営者の説明責任の徹底の観点から、金融商品取引法上の有価証券報告書・内部統制報告書を株主総会への報告事項にすべきであるとの指摘がある。
この点については、現行の金融商品取引法令で、有価証券報告書の添付書類として株主総会に報告した計算書類及び事業報告が求められており、この規定の存在が制約となり得るとの指摘がある。金融商品取引法令の規定について、所要の手当てが講じられるべきである。」
これは先日公表された会計士協会の提言でも取り上げられていました。「金融商品取引法令の規定について、所要の手当てが講じられるべき」とまで書き込んだということは、金商法を所管する金融庁はやるつもりなのでしょう。
副次的効果として、後発事象を心配しなければならない期間が短くなるのは、よいことです。
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