国際会計基準 日本勢、14兆円減益要因(記事冒頭のみ)
IASBが、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したという記事。
「買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った「のれん」と呼ぶ部分について、費用計上義務付けの議論を始め、2021年にも結論を出す。大型のM&A(合併・買収)が相次ぎ、企業財務への影響が強まっていることを考慮した。」
IASBのフーガ-ホースト議長に取材したのだそうです。
現行のIFRSでは、のれんは減損処理のみで、償却はありませんが...
「フーガーホースト議長は減損損失を巡る企業の判断が「楽観的になりやすい」うえ、計上のタイミングも「遅すぎる」と指摘した。IASB内でも以前からのれんの会計処理を巡る問題が意識されてきたものの、これまでは現状維持派が優勢で議論を始めてこなかった。しかし、議長の意向などを踏まえ、議論を始めると7月に正式に決定。今後、規制当局など利害関係者から意見を集めたうえで、のれんの償却を義務付けるかどうかを判断する。」
当サイトでも、8月に東京で行われた同議長のスピーチについて取り上げました。その講演録によると、たしかに、のれんの会計処理に関してディスカッションペーパーで検討する、論点のひとつにのれんの償却があるということはいっていますが、のれん償却の再導入はハードルが高いともいっており、議長自身は償却再導入には消極的な印象です。むしろ、損失計上が「遅すぎる」現行の減損処理を改善する方向で考えているようです。
日経記事は、のれんの会計処理を検討するという議長の発言(これは正しいのでしょう)の合間に、日本では定期償却だという話を織り交ぜて、IASBも定期償却の方向だというふうに話を作っているように感じました。
そもそも、これは減損か償却かという問題ではなく、「減損オンリー」(IFRS現行基準)か、「減損+償却」かという論点であり、日経記事がそれとなくほのめかしている「償却オンリー」という選択肢はありえません。
のれん償却、国際会計基準でも検討 甘い評価、投資家に損失 国際会計基準審議会議長 フーガーホースト氏(日経)(記事冒頭のみ)
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この記事でも、議長は、減損のタイミングが遅いという問題意識は表明していますが、それが定期償却で解決できるとか、定期償却を導入すべきとはいっていません。
当サイトの関連記事
Chairman's speech: Japan and IFRS® Standards(IASB)(再掲)
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IASB議長のスピーチ原稿。日経記事が正しいかどうかは、こちらを読んで判断してはどうでしょうか。(当サイトの理解の仕方も正しいとは限りません。)
日経記事は株価にも影響を与えたようです。
ホットストック:ソフトバンクGが軟調、IFRS「のれん」費用計上巡り議論と伝わる(ロイター)
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