顧客会社の粉飾決算を助けたとして、東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕、起訴され、実刑判決を受けた経営コンサルタントが、今年の司法試験に合格したという記事。
「大手銀行を退職後、中小企業の再建支援コンサル会社を設立。小所帯ながら顧客を数十社抱え、順調に業績を伸ばしてきた。」
「容疑は詐欺。顧客の社長と共謀し、東日本大震災の復興緊急保証制度を悪用、顧客会社の決算報告書を実際は約1億円の損失だったのに、約2300万円の利益と偽って銀行に提出し、融資金約1億円をだまし取ったなどとされた。
顧客の中には資金繰りが悪化し、融資を引き出せないと倒産に追い込まれる恐れのある企業もあった。ギリギリまで経費を切り詰め、銀行との返済計画の見直し交渉も検討した上で、最後の手段として決算をごまかすことは確かにあった。
しかし、佐藤さんはコンサル料以外に顧客から報酬を受け取ったことはなく、悪いことはしていないという自信があった。捜索を受けた当初は「話せば分かってくれるはずだ」と自分に言い聞かせていた。
疑われた顧客会社は融資をすべて事業資金に回し、約定通りの返済を続け、再建の道を歩んでいた。銀行は取引先が再建して債務を返済してくれればいいはずで、むしろ銀行も暗に粉飾を分かって融資するものだと思っていた。多くの中小企業が決算を粉飾せざるを得ない状況にあったからだ。」
「特捜部の検事は「いいですか、粉飾は悪だ。銀行をだまして融資を受け取っているのだから」と反論を理解してはくれなかった。「中小企業はつぶれるしかないということか」と尋ねると、「粉飾決算をしている中小企業が何社つぶれることになろうと、それは仕方がないことだ」と返された。」
容疑者に寄り添う弁護士を目指しているそうですが、現行制度では禁錮以上の実刑を受けると司法修習生になれないとされているとのことで、試験に合格しても弁護士にはなれないようです。
(電子書籍版)
たしかこの本もこの事件を扱っていたような...
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「特捜部の独自捜査班解体の日が迫った最後の夏、同班の検事たちは、ある平凡な中小企業社長と経営コンサルタントに捜査の照準を合わせた。二人三脚で会社再建に取り組んでいた男たちがなぜ、特捜の血祭りに上げられたのか。丹念な取材で浮かび上がった特捜の恐るべき「勘違い」と「欺瞞」。筋書きに合わせるため強引に事実をねじ曲げた捜査テクニック。取り調べの可視化を骨抜きにした現場の実態。特捜の正義とは誰のためのものだったのか―。」
服役後5年で司法試験に合格した経営コンサル佐藤真言氏を阻む「不条理の壁」(Yahoo)
「この事件の立件には、当時、検察不祥事を受けた検察改革で縮小されようとしていた特捜部の組織としての思惑があった。2011年4月に「検察の再生に向けての取組み」が公表され、取調べの可視化の試行など様々な施策が打ち出され、その一環として、特捜部の特殊直告班(主として政界汚職事件など特捜部の独自捜査を担当する部門)が縮小し、一班体制とされることになっていた。それに伴い、廃止されることになった「特捜部特殊直告2班」が、「起死回生の一打」を狙って手掛けたのがこの事件であった。
顧客会社は、社長の突然の逮捕で、銀行融資がストップ、会社は破産に追い込まれ、取引先の零細業者も連鎖倒産した。詐欺に問われた信用協会の保証付き融資も、結果的に、返済不能となった。
会社の倒産は、検察の強制捜査のためだった。しかし、会社が倒産し、銀行融資が結果的に返済不能となってしまったため、融資した銀行は、検察官から「粉飾決算を見過ごしたのか」と言われ被害届を出すよう求められれば、出さざるを得ない。被害弁償ができない1億円を超える詐欺事件となれば、執行猶予はつかない。佐藤氏は、懲役2年4月の実刑判決を受けて、服役した。」
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