韓国では、会計不正事件が続いたことなどを受けて、昨年、「株式会社の外部監査に関する法律」という法律などの全面改正が行われたそうです。
この記事では、主な改正内容を企業、監査人および監督当局に分けて、解説しています。
日本で行われている会計・監査改善策と似ている項目もありますが、目新しいものも含まれているようです。以下、記事より、それらをピックアップしました。
企業
・株式会社に限られている外部監査対象が有限会社まで拡大
・監査人選任権限が経営陣から内部監査機構(監査役又は監査委員会)に移管
・会計不正の摘発、措置に対する内部監査機構の役割の強化
・会社の会計担当役職員を上場会社協議会・コスダック協議会に登録・管理することによる会計関連教育等を通じた責任および能力の向上、中小規模会社の会計処理に関する支援の強化
(日本では、合同会社など株式会社以外の会社形態の場合、どんな大企業でも、外部への開示や外部監査は法定されていません。また、会社だけでなく、会社の会計担当役職員をも監督対象にするというのは、日本の制度にはないのでは(財務担当というのではなく、役員全般の欠格要件はあると思いますが))
監査人
・監査人指定制を監督補完手段として積極的に活用
「定期的指定制」の導入:全ての上場法人および所有経営未分離の非上場会社について9年のうち3年は政府が監査人を指定(会計処理の信頼性が認められる場合は除外)
上場予定、監理後措置等特定事由に該当し、監査人の指定を受けることとなる従前の「当局による指定制」の対象も拡大(会社の財務諸表作成義務の違反、株主要請、標準監査時間未達等を指定事由に追加
・適正水準の監査品質確保を目的とした「標準監査時間制」の導入
・監査人選任期限の短縮
(現行)毎事業年度開始後、4カ月以内→(改正後)45日以内(ただし、監査委員会設置義務会社は事業年度開始日前)
(監査人を当局が指定するというのは、民間同士の自由な契約に基づいて監査を行うという建前からかなり逸脱しています。「標準監査時間制」は、標準時間をどうやって決めるのか、報酬にどうやって反映させるのかなどいろいろ問題がありそうです。監査人選任を早くするというのは、日本でも、監査人交代の場合などで必要でしょう。3月決算会社を例にとると、5月中旬に監査人交代を発表し、それから引き継ぎ手続や準備作業をやっていたのでは、新年度の監査の十分な準備はできないはずです。)
監督当局
・会計不正の内部告発者の保護強化
内部告発者のプロフィール等の公開または不利益措置をした者に対する刑罰、過料賦課の規定を新設
(日本でも、内部告発者全般については、議論されていると思いますが、会計不正防止の観点からも保護を推進すべきなのでしょう。)
日韓でいろいろもめている状況にありますが、会計制度の信頼性においては、隣国に後れをとることのないようにお願いしたいものです。
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