山口フィナンシャルグループ(FG)の2007年3月期通期の連結最終損益が270億円の赤字になるという記事。
記事と会社のプレスリリースを読むと、非常におかしな決算(予想)だということがわかります。
記事によれば、傘下の山口銀行ともみじホールディングス(HD)の10月の経営統合後に山口銀の基準に合わせて、もみじの貸出資産を見直した結果、グループ全体で486億円の貸倒引当金の積み増しが必要になったためだということですが、10月に経営統合したばかりなのになぜ巨額の引当金増額が必要となるのでしょうか。
会社のプレスリリースによると、山口銀行の方が取得側、もみじの方が取得される側のようです。企業結合会計基準では、取得される側(この例ではもみじ)の資産・負債を時価評価し、そのネットの合計額と取得の対価の差額をのれんに計上します。したがって、今回貸倒引当金の増額がなされるもみじの貸出債権は10月の統合時点で時価評価されているはずですから、今後来年3月までの間によほどの情勢の変化がない限り、多額の引当金積み増しが発生するはずがありません。
つまり、統合時点の会計処理においてもみじの貸出債権を過大評価(したがって差額であるのれんが過小評価)されているのではないかということです。いいかえると、統合時点では貸出債権を過大評価し、のれんの金額を意図的に抑えておいて(その結果その後ののれん償却費を押さえることができる)、その後貸倒引当金増額の名目で損失を一挙に出すという、のれんの一括償却の変形ではないかと考えられます。
こんな処理を認めてしまっては、導入されたばかりの企業結合会計基準は骨抜きになってしまいます。
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