会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

(再掲)SECからの手紙

4月17日の日経夕刊の「SECからの手紙」(十字路)というコラムを取り上げます。

このコラムによると「会計士ショックによる金融メルトダウン」を防ぐため、米証券取引委員会(SEC)が「実質的な時価評価の後退」を盛り込んだ手紙を、米国の全上場企業の最高財務責任者に送ったそうです。

「FAS157は有価証券を性質に応じて3つに分類。流動性が高く時価が測れるレベル1、参照できる指標があるレベル2、取引が薄く時価がないレベル3だ。

 手紙は広範な有価証券をレベル3に分類できるとしている。本来レベル2に入るものでも今は市場がゆがんでいるとの解釈だ。」

しかし、レベル2に分類したまま緩い評価を行うことを認めるならともかく、「広範な有価証券」を「取引が薄く時価がない」ようなレベル3に区分するのでは、そうした換金性の低い金融資産を多く保有していることを自白するようなものですから、その点をアナリストなどにつかれれば、むしろそのことで資金調達ができなくなりメルトダウンが起きてしまわないのでしょうか。

ただ、日本では金融商品を時価の信頼性でレベル分けして開示する会計基準はまだないので、その心配?はありません。むしろこのコラムは、多額の証券化商品を抱える日本の金融機関(やその監査人)に対して評価を緩くしろと暗にいっているのかもしれません。

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(以下補足)

日経のこのコラムを解説したブログ記事(吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース)にSECの手紙へのリンクがあったので、目を通してみましたが、基本的にはFAS157を解説したうえで、開示に当たっての留意点を述べているに過ぎません。「実質的な時価評価の後退」といった内容はまったく含まれておらず、「SECからの手紙」が以下のアドレスのレターであるとしたら、日経コラムは完全に誤報であると考えます。

SECの手紙へのリンク
http://www.sec.gov/divisions/corpfin/guidance/fairvalueltr0308.htm

また上記ブログ記事には、日経コラムの元ネタと思われるニューヨークタイムズのサイトのコラム記事へのリンクも紹介されています。

If Market Prices Are Too Low, Ignore Them
http://norris.blogs.nytimes.com/2008/03/28/if-market-prices-are-too-low-ignore-them/

このニューヨークタイムズのコラムでは、たしかにSECが基準を緩めたのではないかという趣旨のことが書かれていますが、最後に4月1日付で以下のような訂正がなされています。

Addendum, Tuesday April 1:

The posting should have noted that the phrases the S.E.C. used are taken from the original rule. This is not a new loophole, merely an invitation to use an existing one without being forced to actually disclose its use. It is a fair bet that the rule writers did not contemplate a market where people could claim virtually every sale was a forced sale, but they did leave the opening.

SECが使った文言は、元々の基準からとったのもであることにふれるべきであった、これは新しい抜け穴などではない、といっています。
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