AIJ投資顧問が、(別の報道によれば、年金資金が投資されていた海外私募投資信託の)監査報告書を顧客に開示せず、それでも請求する顧客には偽造した監査報告書を見せていたという記事。
「監視委によると、AIJは年金基金側から集めた資金を、信託銀行や関連のアイティーエム証券(ITM)を経由して香港のファンド受託銀行に移し、シンガポールの金融ブローカーに運用を委託したり海外ファンドで運用するなどしていた。
こうした運用の監査は外資大手会計監査法人のケイマン籍の監査事務所が担当。この監査事務所はAIJから独立しており、AIJの財務状況を審査して取引実績や運用損による巨額損失を把握、それを反映した監査報告書を作成したという。
しかし、監査報告書の送付先2カ所のうち1カ所は、AIJの浅川和彦社長が取締役を務めるファンド管理会社「エイム・インベストメント・アドバイザーズ(AIA)」で、AIJと事実上一体化していた。もう1カ所のITMは、監査報告書の内容を確認しないままAIJに渡していた。
このため正規の監査報告書は外部に知られることはなく、AIJは顧客の年金基金側から開示を求められても拒否。それでも開示を求める顧客には、知人の公認会計士に偽造を依頼した虚偽の監査報告書を提示し、運用実績が上がっていたように装っていたという。」
まず、監査報告書(監査報告書自体は無限定でしょうからたぶん監査報告書付財務諸表の財務諸表部分のことでしょう)を公認会計士が偽造していたというのは、悪質です。監査報告書を偽造することの意味はわかっていたはずですから、責任は免れません。(それらしい英文財務諸表を作ることのできる能力のある会計士なのでしょう。)
また、私募投資信託の監査報告書(付財務諸表)の開示を拒絶されたあとも、その年金基金は投資を継続していたのでしょうか。報道によれば、年金が負担していた信託報酬の中には監査報酬も入っていたようです。億単位の資金を投資し、しかも監査報酬を負担していたわけですから、監査報告書の閲覧は当然要求し、それが拒絶されたのであれば、ただちに縁を切るべきでしょう。もしかすると、監査を軽視していたのかもしれません。
「外資大手会計監査法人のケイマン籍の監査事務所」のかかわり方も気になります。監査契約で決められた提出先に監査報告書を提出していれば、契約上の義務は果たしたことになるのでしょうが、運用成績が全くふるわないのに、どんどん新しい資金が入ってくることをおかしいと考えなかったのでしょうか。国際的な大手会計事務所なら、詐欺的な会社に名前を使われたりしないよう気をつけているはずですが・・・。
米国のマドフ事件の場合は、関与していたのはほとんど実体のないような個人事務所だったようですが、今回の事件では、(不正の中心となっていたファンドの)監査自体は大手の会計事務所によってきちんと行われていたことになります。
AIJ 監査報告書見せないよう工作(NHK)
「AIJは、客の信頼を得るため、こうした外部の監査を受けていたということです。
しかし、損失が膨らむなか、監査報告書をペーパー会社に送付させて隠すなど、客に見せないよう工作していたということです。」
AIJ:社長ら2人、報酬45億円(毎日)
「監視委によると、AIJの集めた年金資産の受け入れ先となった英領ケイマン諸島籍の「AIMグローバルファンド」の収入は、03年3月期から11年3月期の9年間で、年金基金の受け入れが1458億円、株の売買が14億円の計1472億円。一方、支出は運用損失1092億円▽基金への解約支払い17億円▽委託手数料61億円▽管理報酬45億円▽監査報酬6億円▽投資事業組合への出資181億円(うち現預金などAIM持ち分32億円)▽海外ファンド持ち分21億円▽現預金49億円--の1472億円で、収支が均衡していた。」
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