日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会実務指針第104号「イメージ文書により入手する監査証拠に関する実務指針」を、2022年1月26日付で公表しました。
「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しに伴い、スキャナ保存制度について要件緩和がなされたことや電子取引に係る電子情報の保存が義務付けられたことを受けて、今後、企業の取引情報の電子化が一層加速することが見込まれること等に対応して、監査人が監査証拠を電子データの一種であるイメージ文書で入手する場合の実務上の指針を提供することを目的としたもの」とのことです。
全部で39ページあります。
以下のような構成となっています。
Ⅰ 本実務指針の適用範囲
Ⅱ 監査の前提条件
Ⅲ イメージ文書に係るリスクの識別と評価
1.リスクの識別と評価
2.イメージ文書の特徴とリスク
3.内部統制の理解
Ⅳ イメージ文書に係るリスクに対応する手続
1.評価したリスクへの対応
2.運用評価手続
3.監査証拠として利用する情報の信頼性を検討する手続(イメージ文書の信頼性を確かめるための直接的なテスト)
Ⅴ 適用
「スキャナ保存制度を含む電子帳簿保存法の概要」や「イメージ文書の特性から生じるリスクに対応するための内部統制の例示」など5つの付録がついています。
適用は、2022 年1月1日以後に開始する事業年度(中間会計期間)に係る監査(中間監査)からです(早期適用可)。
全15ページの概要資料もついています。
コメント対応表によると、公開草案に対し、
「本公開草案全体からは、可能な限り書面の原本を廃棄してほしくないというようなトーンがうかがえる。社会全体がデジタル化を志向している現状において、日本公認会計士協会がその流れに逆行するようなスタンスを持っているかのような誤解を招くことのないように表現を検討してほしい。そのため、極力書面の原本を保管してもらうというようなトーンは避けていただきたい。
また、必ずしも監査人の立場から書面の原本の廃棄を禁止するものではない旨を冒頭部分等において明確にした方がよいのではないか。
なお、本実務指針は、スキャナ保存に係る内部統制の整備及び運用を強制するものではないという理解でよいか。」
といった意見が寄せられています。
これに対して、協会は、「書面の原本の廃棄を禁止したり、被監査会社に要請したりするといった立場ではなく...」、「被監査会社にイメージ文書の真正性確保に関する内部統制の整備及び運用を強制するわけではなく、企業における内部統制の整備・運用が十分ではない場合には、Ⅳ3.に記載のとおり直接的なテストで対応する」といった回答をしています。
他にも多数コメントが寄せられたようです。コメントに対応して、公開草案から修正された箇所もあります。
関連する報告書の廃止も公表されています。
IT委員会研究報告第50号「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」の廃止について
自主規制・業務本部 平成27年審理通達第3号「平成27年度税制改正における国税関係書類に係るスキャナ保存制度見直しに伴う監査人の留意事項」の廃止について
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