『メイドインジャパン驕りの代償』という本の著者へのインタビュー記事。
経営者の能力不足による「人災」の例として、パナソニックやシャープを挙げています。
「パナソニックの場合が象徴的です。プラズマパネルへの過剰投資で失敗したのにそれを糊塗し、方針転換で今度は国内で液晶パネルに投資したら2年も経たずに減損処理を迫られることになりました。約8,000億円という巨費を投じて三洋電機を買収しましたが、そのシナジー効果が出るどころか、買収した事業の業績が悪化し、のれん代の償却を迫られ、それが大赤字の大きな要因となっています。
三洋買収については、中村邦夫相談役(前会長)が社長時代に、グループの不動産会社である松下興産を特別清算した際に、三井住友銀行に債権放棄してもらい「借り」を作りましたが、その「借り」を返すために、メーンバンクとして扱いに困っていた三洋電機の買収を引受けたわけです。その判断に経済合理性があったとはとても言えません。こうした現実を見ないで、すべて円高のせいにしていたら、誰も経営責任を取る人はいなくなりますよ。」
「シャープも似たり寄ったりの状況です。片山幹雄会長が社長時代に無防備な液晶への投資に走りましたが、代表権を返上しただけで今でも会長に留まっています。断っておきますが、私は投資して攻める経営を否定しているわけではなりません。片山氏が社長になる前までは、シャープの液晶はテレビや携帯電話など社内向けが中心でした。「亀山モデル」は自社消費が中心だったのです。
ところが、堺工場建設の狙いは、液晶パネルの外販強化もあった。当然、営業戦略も変わってくることころですが、手を打てなかった。金庫番の役員も育てていないため、社債など借入金で投資しているのに、その償還の管理もろくにできていなかった。過剰設備と過剰在庫で赤字を垂れ流し、業績見通しも甘く、5四半期連続の下方修正です。これが円高のせいですか? そう指摘する経済学者の感覚が信じられません。完全に経営に「穴」が開いていたわけですよ。」
松下興産の破綻はバブル時の不動産投資の失敗によるものと思われますが、そのつけを、20年後に支払わされたということでしょうか。また、松下興産はパナソニックのグループ企業というより、「松下家」の会社です。三洋電機も「松下家」の親族の会社です。大王製紙の例もそうですが、創業家との関係をきちんと整理できなかったというガバナンスの問題でもあると思われます(もちろん、大王製紙の不正融資と違ってパナソニックの三洋電機買収は違法行為ではありませんが)。
ついでにいえば、三洋電機の買収は、三洋電機の粉飾事件(単体決算における子会社株式評価損の過少計上)を金融庁が摘発したことがきっかけのひとつと考えられます。金融庁もまわりまわって、パナソニックの苦境の原因の一つとなっているといえなくもありません。
シャープの方は、台湾企業による支援がとん挫してしまったようです。ゴーイング・コンサーンの議論が出てくるのでしょうか。あるいは、公的ファンドに頼るのでしょうか。
シャープ:鴻海と交渉中止 協業巡り対立、期限内には困難(毎日)
メイド イン ジャパン 驕りの代償 井上 久男 NHK出版 2013-01-17 by G-Tools |