(ここまで断定的に報じているのは毎日だけのようですが)政府が、東京電力について、公的資金による出資を通じて政府管理下に置く方針を固めたという記事。
そのような措置が必要となる背景については以下のように書いています。
「福島第1原発は、大震災と大津波で原子炉の炉心冷却機能が停止。炉心が溶融するなど米スリーマイル島での原発事故をしのぐ、深刻な放射性物質の漏えい事故となった。事態収拾に向けた冷却機能の復旧作業は難航しており「(原子炉が)最終的に安定するにはかなりの時間がかかる」(東電の勝俣恒久会長)見通しだ。
東電は31日、事故対応と電力供給事業の継続に必要な資金を賄うため、メガバンク3行などから約1兆9000億円の緊急融資を受けた。しかし、炉心の冷却機能復旧にこぎ着けたとしても、同原発1~4号機の廃炉に向けた費用や、損害賠償などに巨額の負担を迫られるのは確実。特に避難を強いられた原発周辺の多数の住民や農漁業者らへの損害賠償は数兆円単位に上ると見込まれ、東電独力では負担しきれない可能性が高い。」
公的支援ということになれば、同社の2011年3月期決算も注目されることでしょう(現時点ではそれどころではないとは思いますが)。
仮に、廃炉は正式決定されていないので会計処理しない、資産除去債務も事故後の状況で合理的な見積もりができないので見直さない、損害賠償金もいくらになるか見当がつかず合理的な見積もりができないので計上しないという方針で決算を組んだ場合、形式的には日本の会計基準で認められる範囲だとしても(会計士協会も注記してあればよいという趣旨の指針を出しています)、財務諸表の利用者に有用な社会的に受け入れられる財務諸表になるかどうかは非常に疑問です。
東電の財務諸表(昨年3月期)をざっと見てみると、資産に、原子力発電設備が7000億円弱(耐用年数を経過しているようなおんぼろ発電所が多いせいかそれほど大きな金額ではない)、核燃料が約9000億円計上されていますが、負債側で、関連すると思われる引当金(使用済燃料再処理等引当金、使用済燃料再処理等準備引当金、原子力発電施設解体引当金災害損失引当金)が合計で1兆3000億円弱(このうち原子力発電施設解体引当金と災害損失引当金で約6000億円)も計上されています(引当金の繰り入れ額は電力料金の算定に反映され、回収されているのでしょう)。
これらの資産負債のうち、どれだけが今回の事故で取り崩し(損失の充当)対象となるのかは不明ですが、全体でみれば、損害賠償金を除き、企業の存続に影響するほどの金額ではないかもしれません。
ただし、引当金は会計上の処理にすぎないので、企業の資金繰りとは別の話です。また、繰延税金資産も大きな金額が計上されています。原発事故以外の地震の影響も考えなければいけません。
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