帳簿の世界史 ジェイコブ ソール Jacob Soll 文藝春秋 2015-04-08 by G-Tools |
アベノミクスは世界史上、類を見ない試み
「帳簿の世界史」著者が語る、債務圧縮は空論より実行を
「---本にはイギリスの陶磁器メーカーであるウェッジウッドの創業者、ジョサイア・ウェッジウッドも登場します。彼は厳格な会計で名門企業の礎を作りました。日本では今、名門企業の東芝が不適切な会計問題で揺れています。
ソール氏:日本企業は国際的に優れた会計基準を導入していますが、問題はそれがきちんと監査され、機能しているかです。日本でそうした努力がなされているかどうか私は知りませんが、もし不正があったのなら、改革を続けなければなりません。
CEO(最高経営責任者)が必ずしも会計の専門家である必要はありませんが、ジョサイアのように会計に詳しければ自社の帳簿を自分で監査でき、会社に対する責任を全面的に果たすことができます。効率的に管理し、正しく改革することができます。自社で起きた不正や失敗について、知らなかったとは言えませんからね。
米国でもバランスシートに記載される情報は限られており、投資家や政府が知りえる内容は十分ではありません。もっと透明性を高めるための実効的な手法や基準が必要です。それは政府だけでなしえることではありません。市民社会とメディア、政府、企業、そして会計の専門家が一緒になって努力すべきです。
メディアは東芝の問題を詳しく報じ、信頼できる会計の専門家たちによる会計や監査についての説明がなされなくてはなりません。それが制度改革に続く道であることは歴史が証明するところです。」
会社や当局の説明をうのみにしてはいけないのでしょう。
「---世界で最も財務が透明な国はどこですか。逆に、もっとも不透明な国は。
ソール氏:最も透明性の高い国はニュージーランドとオーストラリアです。ほとんどの専門家の間で意見の一致するところでしょう。両国には競争力の高い会計事務所が数多くあり、会計士という職業が社会の尊敬を集めています。日本の改革のお手本になるかもしれません。
最悪な国のリストは長すぎてここには書ききれません。政治的に閉ざされた国の会計は、どこも不透明です。政治的な自由と汚職の撲滅は財務の透明性のためだけでなく、民主主義の基本です。・・・」
日本は、東京電力の巨額粉飾(推定5兆円超)が見逃されている(というより役所が主導して粉飾決算をやらせている)ことなどを考えると、決して財務透明性が高い国とはいえないでしょう。
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これも不透明性の象徴です。
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新国立競技場、船頭なき"大艦"の視界不良
なぜ建設費が2520億円に膨らんだのか(東洋経済)
「建築コンサルタントの森山高至氏らによると、新国立競技場のキールアーチは長さ370メートル、直径7メートル、重さ約3万トン。つまり、東京スカイツリー(高さ634メートル、重さ約4万トン)の半分ほどのスケールの巨大構造物を2本、建設現場で造ることになる。
それには何台のクレーンが必要かいまだに不明で、その間は観客席など競技場本体の工事に取りかかれない。そのため、工期の予定も立たないのではないか、と懸念する声がある。
しかも、建設現場はかつて唱歌「春の小川」にも歌われた渋谷川の流れていた場所。「土壌が軟らかく、キールアーチの固定が困難」と言う建築家もいる。
アーチの地下部分を長くすれば都営地下鉄大江戸線にぶつかるため、地下に長さ約300メートルの鉄骨を埋めて、アーチの両端を結ぶ必要があるようだ。
このキールアーチを造るだけで、1500億円の費用がかかる。ザハ氏のデザインが採用された当初から反対していた建築家の槇文彦氏らは、「キールアーチをやめれば、1000億円以下で競技場建設が可能」と断言する。」
「・・・プロポーザル方式(技術提携を結んだ特定の業者と契約を結ぶ方式)で竹中工務店、大成建設の2社と建築契約を結んだはいいが、詳細な設計図は未完成。キールアーチをどちらが建設するか、決まっていないという。さまざまな建築関係者からこうした話を聞かされると、なぜこんなに悲惨な状況に陥ってしまったのか、とあらためて嘆かざるをえない。」