2024年5月27日に開催された日本IFIARネットワーク総会の議事要旨などが公開されています。
(日本IFIARネットワークについては→日本IFIARネットワーク(Japan Network for IFIAR)の設立について。日本監査研究学会、日本監査役協会、日本公認会計士協会、経団連、金融関係諸業界団体などがメンバーです。)
(1)監査法人のガバナンス、(2)サステナビリティ開示・保証、(3)監査におけるテクノロジーの利用をテーマに、ディスカッションを行ったようです。
気になった発言より。有識者の見解ということで...
「監査法人のガバナンスコードは、上場会社等監査人登録制度が法定化されたことでより大きな役割を持つようになると考える。上場会社等監査人名簿が登録された監査人の監査品質を保証することになるため、登録された監査人に監査法人のガバナンスコードを適用するだけでなく、その適用状況に関してフォローできる枠組みを入れるべきであり、業務及び財産の状況に関する説明書、又は透明性報告書といった形で公表することを義務付けるべき。企業や投資家が監査品質を外部から確認できる仕組みが必要。」
「監査の担い手の質・量の確保のため、監査・保証の魅力を伝えつつ、アドバイザリー以外の監査サービス自体のビジネスモデルで十分に成り立つという議論が世界的になされていくことが重要。」
「約10%から15%の有価証券報告書が訂正される状況を踏まえると、グリーンウォッシングを防ぐためにも、開示と保証は同時に開始されるべき。企業の負担が大きいのであれば、実施当初は会計士や保証業務提供者に対して保証導入支援業務を認め、3年等の一定期間経過後に正式に保証を導入することも考えられる。」
「開示のスケジュールについて、有価証券報告書の2段階開示については、総会前の有価証券報告書の開示といった論点との関連性も含めて検討すべき。法務省等、他の省庁との連携も必要になると思うが、株主総会の時期も含め、国際的に見た際の日本の立ち位置にも目を向け検討を進めるべき。」
「サステナビリティに関して具体的に検討が進む中、企業や監査法人における人材育成について日本全体として考える必要がある。試験制度をどうするかという観点も出てくると考える。」
「保証の内容については、過度に難しいことを求めるべきではない一方で、投資家が要求する水準に応えることも必要。」
「統計ソフトウェアを用いて分析したものの、なぜその分析結果になったか、(分析者自身に知識や経験がなく)仮説が立てられない例をよく目にする。AIに長けた専門家を育成し、生成AIによる不正の兆候の発見やシナリオ分析を進めたとしても、その人自身の知識と経験不足により、生成AIが検出した不正がなぜ起きたか、原因に結び付けられない事態となっては身もふたもない。AIの推進を強調する場合、生成AIによる分析結果に対して専門的な判断(professional judgment)を行える能力の向上も同時に強調していくべき。」