会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

独自入手の極秘資料が暴く国民欺く東電賠償スキーム(週刊ダイヤモンドより)

独自入手の極秘資料が暴く国民欺く東電賠償スキーム

東電の賠償スキームを取り上げた記事。

「東京電力の福島第1原子力発電所の事故の損害賠償をめぐり、本誌は政府が賠償スキームの根拠とした極秘資料を入手した。」

会計に関する部分が気になります。

「試算の前提条件として、被害者への賠償金を10兆円と仮定し、2011年度から5年にわたって年間2兆円ずつ支払うことにしている。その資金は機構から援助されるが、東電は機構に対し、負担金というかたちで25年かけて返済する設定だ。」

「11年度に10兆円の賠償金が負債に乗ると、東電は即、債務超過に陥る。そのため、「機構宛請求権」なるものを資産側に同じ額だけ計上して相殺している。

 資産と負債に等しい額を乗せても、維持しなければならない自己資本比率は引き下がるから、11年度に機構が優先株を引き受けるかたちで1兆8000億円、資本注入することにしている。」

「・・・賠償金を10兆円と仮定しているが、バランスシート上で資産と負債に同額を計上しているため、賠償額がいくらであろうと東電自身はなにも傷まず支払うことができるという奇策が講じられているのだ。」

「機構宛請求権」というのは非常にあやしい資産です。単純に考えると、発生した損害の保険金を保険会社に請求し、その債権を資産に計上するのと同じということになります。しかし、保険の場合と大きく異なるのは、東電は機構に対し、その金額(あるいはその一部)を負担金として返済しなければならないということです。

ということは、請求権の資産計上と同時に、機構に対する負債(未払金)も計上しなければつじつまが合いませんが、この記事によるとそれは想定されていないようです。

この記事のようなスキームだとすると、まさに粉飾支援「機構」と称すべきでしょう。

優先株による増資も同じような問題がありますが、この点は以前に説明したので省略します。

ちなみに、東電の2011年3月期決算(5月20日発表)では、原発関連の賠償金の引き当てはほとんど行っていない模様です。
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