会計検査院が、「原子力関係検査室」という組織を設けるという記事。
「検査室は26日付で発足予定。・・・原子力規制委員会や原子力損害賠償支援機構も対象にする。
事故の処理費や賠償金などで経営が悪化した東電については、支援機構が出資・援助し、実質国有化されたことから、検査院は今年8月に検査に着手した。国会からも検査を要請されており、東電への国の支援のほか、東電の事業計画や経営合理化の履行状況などを詳しく調べる。」
「原子力関係検査室」の検査対象となるという原子力損害賠償支援機構と東京電力の決算(2012年3月期)を見比べてみましたが、大きな齟齬があるようです。
機構の財務(原子力損害賠償支援機構)
このページから2012年3月期財務諸表の損益計算書をみると「資金交付費」という費用が1,580,322百万円計上されています。これは、事業報告書によると、東京電力への資金交付の決定金額(平成23年度累計)です。
(原子力損害賠償支援機構の事業報告書より)
一方、当サイトですでに取り上げたように、東京電力のまったく同じ会計期間(2012年3月期)の損益計算書では、原子力損害賠償支援機構資金交付金 2,426,271百万円が特別利益に計上されています。
(東電の平成23年度報告書より)(再掲)
つまり、資金をあげる方(機構)が、2012年3月期にはおおよそ1兆6千億円しかあげていないといっているのに、資金をもらう方(東電)は、同じ期に2兆4千億円もらったといっているわけです。
会計検査院の3名の検査官には、会計学者と大手監査法人出身者が含まれています。きっとこの矛盾を解明してくれることでしょう。
(なお、当サイトの見解は、東電は会社が存続する限り交付金をいつかは返済しなければならないので、交付金を収益計上するのは間違いであるというものであり、計上時期のズレは中ぐらいの問題と考えています。)
(もちろん、原発事故の安全な収束と損害賠償の迅速な実施を機構や東電にきちんとやらせることが検査院の最重要任務だと思いますが、会計問題もそれなりに重要です。)
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