財務匯報局は「調査結果に失望した」とコメント
香港の監督当局が上場企業の会計監査に対する検査結果を公表したという記事。
「香港財務匯報局は6月3日、2020年の年次監察報告書を発表した。それによれば、調査対象となった上場企業の37件の会計監査案件のうち、監査の品質が当局の定める「良好」の基準に達したものは1件もなかった。27件は「改善が必要」または「重大な改善が必要」であり、10件は「一部改善が必要」という結果だった。
香港財務匯報局は、2019年に発足した香港上場企業の監査法人を監督する独立機関だ。前出の報告書では、2019年10月1日~2020年12月31日を対象とし、ランダムに選んだ上場企業の37件の監査案件と、それを担当した会計事務所18社を調査した。」
「財務匯報局は、会計事務所を業務規模に応じてA、B、Cの3類に区分し、A類については実名を公表している。それらは、世界4大会計事務所のデロイト、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、KPMG、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)と、イギリス系の立信徳豪(BOD)、香港系の国衛(HLB)の合計6社である。」
こういうのは、厳しく検査すればするほど、成績が悪いようにみえるので、検査結果だけで監査のレベルは判断できないでしょう。
そういう限界はあるものの、検査結果を実名で公表するのは意味があると考えているのでしょう。日本も、協会の品質管理レビューや、金融庁(公認会計士・監査審査会)の検査の結果を実名で公表してはどうでしょうか。
(米国のPCAOBは、監査事務所の規模に関係なく、決算結果を事務所ごとに公表しているようです。ただし、公表されるのは、個々の監査業務ごとの不備事項(監査先の会社名は伏せられている)だけで、事務所全体の品質管理に関する指摘事項の公表は、指摘後、改善が見られない場合に限られているようです。)
ところで、香港に対する中国の締め付けが厳しくなって、会計士業界にも影響が出ているようです。
統制の香港 国安法1年(下)経済 深まる本土依存
中国化、外国企業にリスク(日経)(記事冒頭のみ)
金融業界の景気はよいようです。
「2019年の大規模デモ、20年の香港国家安全維持法(国安法)施行を経て社会が激変するなか、香港の金融市場は平静を保つ。同法施行前と比べて預金残高は6%増え、株価指数のハンセン指数は2割上がった。香港ドルの対ドル相場も定められた取引変動幅の上限近くに張り付く。
大手会計事務所デロイトによると、1~6月の新規株式公開(IPO)調達額は2097億香港ドルと前年同期の2.4倍。香港取引所は特別買収目的会社(SPAC)を除くベースで米ナスダック、ニューヨーク証券取引所に次ぐ世界3位だ。
ここでもけん引するのは中国だ。今年に入り、動画投稿アプリの快手科技や京東物流、検索大手の百度(バイドゥ)など中国企業の大型上場が相次いだ。IPO調達額に占める本土企業の割合は96%に達した。
HSBCやシティグループなど欧米の主要金融機関は中国ビジネスをにらんで、香港で採用拡大に動く。「自由なくして金融なし」と撤退を示唆したSBIホールディングスも、現地法人が撤退しない意向を示した。」
しかし、締め付けも...
「国際都市の看板が色あせ「中国の一都市」になれば、本土流の統制も持ち込まれる。香港政府は今月、公認会計士の資格を認定する権限を業界団体から公的機関に移すと突如提案した。民主派寄りの業界団体の力をそぐ狙いがあるとされる。
香港にある台湾の出先機関には、香港政府が台湾人職員のビザ更新の条件として(中国大陸と台湾は一つの国に属するとする)「一つの中国」を支持する誓約書に署名を求めた。多くの職員のビザが更新されず、7月にも運営が停止する恐れがある。香港と台湾のビジネス往来にも支障が出かねない。
一部の中国人は「中国も豊かになったのになぜ香港だけ自由なのか」と複雑な感情を抱く。旅行で訪れ「香港人に冷たくされた」と感じる人も少なくない。国際社会が指弾する香港の統制強化は、中国本土では驚くほど支持されている。
習近平(シー・ジンピン)指導部からすれば、香港の民主派など「外敵」と戦う姿を国内に見せれば、愛国心を鼓舞でき求心力が高まる。コンサルティング会社A2グローバル・リスクは「共産党があおる反外国感情が中国と香港で活動する外国企業のリスクを高めている」と警鐘を鳴らす。
立教大の倉田徹教授は「かつて中国に資本主義を見せるショーウインドーと呼ばれた香港は、世界に中国式統治を示す場所になった」と話す。香港はわずか1年で政治、経済、社会のすべてが「中国色」に染まった。」
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