企業会計基準委員会は、「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の一部改正を、2006年12月8日に公表しました。ただし、現在法務省で検討がなされている「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」(平成18年10月4日公示)に関わる記述が含まれているため、その部分を未確定として公表するという変わった公表の仕方になっています。
適用は2006年4月1日以後開始事業年度からですが、この改正適用指針公表日(12月8日と確定日のどちらか?)前の組織再編については、改正前の適用指針によることができます。
改正項目は以下のとおりです。(改正適用指針の概要より)
共通支配下の取引等に関する会計処理
(1) 子会社と孫会社の合併の会計処理(子会社が吸収合併存続会社となる場合)
(2) 子会社と他の子会社の合併の会計処理(抱合せ株式の会計処理)
(3) 完全親子会社関係にある組織再編において対価が支払われない場合の会計処理
(4) 子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
株式交換及び株式移転に関する会計処理
(1) 株式移転設立完全親会社による子会社株式の取得原価の算定の簡便的な取扱い
(2) 株式交換又は株式移転における新株予約権付社債を承継する場合の会計処理
(3) 株式交換または株式移転直前に子会社が自己株式を保有している場合等の会計処理
自己株式に関する会計処理
(1) 取得と判定された場合において、取得企業が対価として自己株式を処分したときの会計処理
(2) 持分の結合と判定された場合において、自己株式を対価として処分したときの会計処理
(3) 持分の結合と判定された場合における自己株式の消却又は消滅の会計処理
その他
(1) 連結財務諸表原則を適用すべき企業結合に関する会計処理及び開示の取扱い
(2) 非適格合併等における税務上ののれんの税効果
最後の項目はついでに付け加えたという感じですが、実は難しそうな内容です。
のれんは、取得の対価を配分した残余という考え方なので、わざわざ税効果を考えることはありません。しかし、非適格合併等で税務上ののれんがある場合には、会計上は税務上ののれんは計上していないとみなし、その金額を一時差異として繰延税金資産(負債)を認識するという指針になっています。(会計上ののれんは、繰延税金資産・負債を計上した後に算定)
法務省令改正に関する記事
ところで、企業結合会計基準やその適用指針では、共通支配下の結合は簿価引継となっています。たしかに、親会社の連結決算では、連結グループ内の合併などは、連結上、なかったものとする必要があり、結果として簿価が引き継がれるというのはわかります。しかし、結合する当事者自体はそれでよいのでしょうか。
例えば、上場子会社A社が、別の子会社B社を吸収合併したような場合(A社が取得側とする)を考えてみます。
親会社の連結では、当然、この取引を消去しなければならず、結果として、資産・負債の簿価に変更は生じません。しかし、上場子会社A社の決算では、B社をB社株主(この場合たまたまA社の親会社だった)から買ったという実態を表すためには、パーチェス法で処理すべきでしょう。そうでなければ、他の上場会社との比較ができなくなってしまいます。
これが、A社が親会社から不動産を取得するという場合だと、当然A社は親会社における簿価ではなく、A社が取得した時点の時価でその不動産を計上します。親会社の連結決算では、この取引は消去されますが、だからといってA社に簿価での計上を強制する理屈はありません。
不動産の場合と企業結合の場合で、会計処理の考え方がまったく異なるというのは理解しがたいものがあります。(実務上の配慮ということなのでしょうか。)
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