2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)の公表
企業会計基準委員会は、2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)を、2024年11月21日に公表しました。(2024年11月1日に似たような名前の公表を行っていますが、そちらは「改正」ではなく「修正」です(→当サイトの関連記事)。)
以下の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告の改正案です。大きく3つに分かれています。
Ⅰ.包括利益の表示に関する提案
・企業会計基準公開草案第81号(企業会計基準第25号の改正案)「包括利益の表示に関する会計基準(案)」
・企業会計基準適用指針公開草案第83号(企業会計基準適用指針第9号の改正案)「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針(案)」
Ⅱ.特別法人事業税の取扱いに関する提案
・企業会計基準公開草案第82号(企業会計基準第27号の改正案)「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」
・企業会計基準適用指針公開草案第84号(企業会計基準適用指針第28号の改正案)「税効果会計に係る会計基準の適用指針(案)」
Ⅲ.種類株式の取扱いに関する提案
・実務対応報告公開草案第69号(実務対応報告第10号の改正案)「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い(案)」
以下は、主に「本公開草案の概要」からの抜粋によってまとめました。
Ⅰ 包括利益の表示
「包括利益会計基準改正案は、これまでに公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」、「直接純資産の部に計上」及び「直接資本の部に計上」という用語について、連結財務諸表上においては「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるための変更を行うことを提案している。」
(現行基準でも、連結における「連結損益計算書又は連結損益及び包括利益計算書」や「その他の包括利益累計額」への読み替え規定はあります。)
「株主資本適用指針改正案は、連結株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額を主な変動事由ごとに表示する場合の例として示す項目について、「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」等の用語が使用されていたため、用語について見直しを行うことを提案している。...「組替調整額」及び「当期発生額」という用語に変更することを提案している。」
Ⅱ 特別法人事業税
「法人税等会計基準改正案は、特別法人事業税の地方税法の規定により計算した所得割額(税率については地方税法に規定する標準税率による。)によって課すもの(以下「特別法人事業税(基準法人所得割)」という。)について、事業税(所得割)と同様の取扱いを行うこととなることを明確化するための変更を行うことを提案している。
また、開示に関する定めについて、法人税等会計基準第 9 項における「法人税、住民税及び事業税などその内容を示す科目をもって表示する」とする記載における「法人税、住民税及び事業税」が表示科目の例を示していることがより明確となるように表現の変更を行うことを提案している。」
「税効果適用指針改正案は、法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれることを明確化するとともに、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する定めに関して、特別法人事業税は国税であるため、特別法人事業税(基準法人所得割)について法人税及び地方法人税と同様の取扱いが行われることを明確化することを提案している。」
(概要では、「特別法人事業税」が国税であることが説明されています。)
基準案とは別に、今後の基準開発の方向性に関する質問を設け、意見を募るそうです。
「審議の過程では、法人税等会計基準は、個別の税金の創設又は廃止の都度改正が必要となる構成になっていると考えられるため、法人税等会計基準の適用対象となる税金について、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより特定する方法によらない定めを検討してはどうかとの意見が聞かれた。...
当委員会は、今後の法人税等会計基準の開発の方向性について現時点では何ら判断を行ってはいないが、法人税等会計基準の適用対象となる税金を定める方法を見直すことに関して市場関係者からコメントを募集し、今後の基準開発の方向性を検討する上での参考としたい。」
Ⅲ 種類株式
「実務対応報告第 10 号改正案は、実務対応報告第 10 号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第 10 号」という。)の適用対象となる種類株式に関する定めについて、会社法の施行に伴い削除された商法(以下「旧商法」という。)の条文を参照したままとなっていることを検出したため、会社法を参照する定めに変更することを提案している。」
適用は、Ⅰが、公表日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用、Ⅱが、公表日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用、Ⅲが、公表日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用などとなっていますが、それぞれ、早期適用や経過措置が定められている場合もあるので、詳細は改正案をご覧ください。