ドイツのワイヤーカード社の巨額現金不明事件は、当サイトですでに取り上げていますが、この日経記事では、少し詳しく書いているようです(当初はベタ記事のみ)。
「現金は存在していなかった――。ワイヤーカードは22日、銀行の信託口座にあるはずの19億ユーロが存在していなかった可能性が高いと明らかにし、2019年通期と20年1~3月の決算を取り下げることを発表した。
19億ユーロはフィリピンの大手2行の口座にある前提だったが、フィリピン中銀は21日、現金が同国の金融システムに入り込んだ事実はないと発表。」
「問題の発端は、ワイヤーカードが18日、監査法人から現金が口座にあることを確認できないと通告を受けたと発表したことだ。虚偽の残高確認があったことを示すものも見つかったという。マークス・ブラウン最高経営責任者(CEO)は19日、辞任に追い込まれた。」
会社の存続にも影響しそうです。
「不正会計問題はワイヤーカードの存続に影を落としている。19日には融資継続について銀行と「建設的な協議」をしているとの声明を出した。だが、打ち切りのリスクは否定できない。独メディアによると、米投資銀行と資金繰りについて検討しており、今週末をメドに結論を出すもようだ。」
有望な会社とみられていたようですが、今回の問題で株価や社債価格が急落しています。
「DAX30に入ったワイヤーカードは、新陳代謝が遅れている独産業界の期待を一身に背負う存在だった。時価総額はピークの約3兆円から3000億円以下になった。社債価格も18~19日の2日間で6割近く下落した。」
記事では、取引先への影響(「ワイヤーカードは米アップルや米ビザといった電子決済関連の企業などと幅広く取引があり、破綻した場合の影響が警戒され始めている」)、融資している金融機関への影響などについてもふれています。ソフトバンクグループから投資を受けていましたが、ソフトバンクグループには損失は及ばないとみられているのだそうです。
日経記事のグラフで示されているように、フィナンシャルタイムズが不正会計疑惑を報じたのが昨年1月で、その後、KPMG(監査人とは別の会計事務所)も調査を行っています。1年以上も、会社や監査人(EY)や調査を行っていたKPMGは何をやっていたのだろうと疑問に思われます。日本の山一証券やオリンパスの粉飾のように、調べられていた部分をきれいにする一方で、隠しきれない損失を外国銀行への架空預金でごまかそうとしていたのでしょうか。
ワイヤーカード、所在不明の現金19億ユーロは存在しない公算大(ブルームバーグ)
Wirecard Fights for Survival as Billions May Not Exist(ブルームバーグ)
このブルームバーグ記事によると、MUFGも、80百万ユーロの融資枠があるようです。
会社のプレスリリース(22日付)。
Wirecard AG: Statement of the Management Board about the current situation of the Company
The Management Board of Wirecard assesses on the basis of further examination that there is a prevailing likelihood that the bank trust account balances in the amount of 1.9 billion EUR do not exist. The company previously assumed that these trust accounts have been established for the benefit of the company in connection with the so called Third Party Acquiring business and has reported them as an asset in its financial accounts. The foregoing also causes the company to question the previous assumptions regarding the reliability of the trustee relationships.
The Management Board further assesses that previous descriptions of the so called Third Party Acquiring business by the company are not correct. The Company continues to examine, whether, in which manner and to what extent such business has actually been conducted for the benefit of the company.
Wirecard withdraws the assessment of (i) the preliminary results of the financial year 2019 (revenue and earnings before interest, taxes, depreciation and amortization (EBITDA)) of 14 February 2020 (last confirmed on 18 June 2020), (ii) the preliminary results of the first quarter of 2020 (revenue and EBITDA) of 14 May 2020, (iii) the EBITDA prognosis for the financial year 2020 of 6 November 2019 (last confirmed on 14 May 2020) and (iv) the Vision 2025 prognosis for the financial year 2025 on transaction volume, revenue and EBITDA of 8 October 2019. Potential effects on the annual financial accounts of previous years cannot be excluded.
2019年の仮実績数値や2020年の予測数値は撤回するといっています、また、過年度の財務諸表への影響も排除できないとしています。そうなれば、監査人(EY)の責任問題も出てくるでしょう(監査報告書を出していない2019年仮数値や今後の予測数値については責任の対象外と思われます)。
当サイトの関連記事(巨額現金不明発表時)(それ以前の関連記事へのリンクもあります。)
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