当サイトでも先日紹介した、「国際統合報告フレームワーク」草案の仮訳が、日本公認会計士協会から公表されました。
60ページ以上あり、読むのはたいへんそうですが、英語のままよりはずっと親切です。
ためしに統合報告の定義の部分を抜き出してみました。
(仮訳)
統合報告<IR>を定義する
1.2 <IR>は、組織による、長期的な価値創造に関するコミュニケーションをもたらすプロセスであり、定期的な統合報告書という形で最も明示的に表される。
1.3 統合報告書は、組織の外部環境を背景として、組織の戦略、ガバナンス、実績及び見通しが、どのように短、中、長期の価値創造につながるかについての簡潔なコミュニケーションである。
(原文)
Integrated Reporting <IR> defined
1.2 <IR> is a process that results in communication by an organization, most visibly a periodic integrated report, about value creation over time.
1.3 An integrated report is a concise communication about how an organization’s strategy, governance, performance and prospects, in the context of its external environment, lead to the creation of value over the short, medium and long term.
このフレームワークでは、資本(財務的な資本だけでなく、知的資本、人的資本、社会関係資本なども含まれます)、ビジネスモデル、価値創造が基本概念として挙げられているなど、経営学的素養があった方が取り組みやすいのかもしれません。
6つの基本原則と7つの内容要素は、以下のように訳されています。
(基本原則)
・戦略的焦点と将来志向
・情報の結合性
・ステークホルダー対応性
・重要性と簡潔性
・信頼性と完全性
・一貫性と比較可能性
(内容要素)
・組織概要と外部環境
・ガバナンス
・機会とリスク
・戦略と資源配分
・ビジネスモデル
・実績
・将来の見通し
外部環境から取り入れたさまざまな資本を利用して組織が価値創造を行っている、という経営学のテキストにでも出てきそうな図も含まれています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/49/780a20a946b9d1f50872da33651f0469.png)
(クリックで拡大)(仮訳17ページより)(真ん中の四角は、「組織による短、中、長期的な価値創造」です。)
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統合報告セミナー開催のご案内(日本公認会計士協会)
6月に、国際統合報告評議会 (IIRC)のCEOや伊藤邦雄・一橋大学教授らを招いてセミナーをやるそうです。協会もそれなりに力を入れているようです。
なお、ネットで調べてみると、「over time」には「長い年月の間に[をかけて](少しずつ)」という訳もあるので、「長期的な」という訳でも間違いではないのでしょう。例文をみても、長い期間をかけて生ずる事象の例が多いようです。
over time 英語例文一覧