首相が主張している「新しい資本主義」により、企業の情報開示負担は重くなるだろうという記事。
「岸田文雄首相が1月17日の施政方針演説で改めて強調した「新しい資本主義」は、企業に情報開示の高いハードルを課す。四半期決算の見直しに目を奪われ、企業の負担が軽くなると考えるのは早計だ。」
記事前半は、コーポレートガバナンス・コードでプライム市場を選んだ企業に求められるTCFDなどによる気候変動関連開示や英文開示の話です。
後半は、首相の施政方針演説をもとにいろいろ述べています。
「岸田首相の施政方針演説を東証プライム市場との関連で、検証してみる。注目したいのは、22年中に「非財務情報の開示ルールを策定する」と述べた点だ。演説の文脈から判断して、人件費を単なるコストではなく人への投資ととらえ直し、いかに企業価値の創造に貢献しているかを示す情報開示(ディスクロージャー)制度などが念頭にあるとみられる。
内閣官房の「新しい資本主義実現会議」では、人の価値を財務諸表で認識する、ハーバード・ビジネス・スクールのインパクト加重会計イニシアチブ(IWAI)研究などが議論の俎上(そじょう)に載せられた。日本版IWAIといったプロジェクトが立ち上がる可能性がある。
岸田首相は「気候変動問題」や「炭素中立」への対応を重視する姿勢も示した。非財務情報開示との関わりで考えれば、企業にTCFD開示などをさらに強く求めるのは、ほぼ確実と思われる。さらに、国際的に注目が集まる自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提唱にそったディスクロージャーも、求められるようになるかもしれない。森林や水資源の保護などについて企業に開示を求めるルールだ。
岸田首相はまた、男女の賃金格差の是正などにも意欲を見せた。こうした多様性の問題についても、近年は証券取引所が企業に対応策の開示を求めるようになっている。LGBTQと呼ばれる性的多様性の状況報告を企業に求めることを決めた米ナスダックの例が代表的だ。様々な非財務情報の開示が、中期的に東証のガバナンス・コードに盛り込まれ、国際優良企業向けのプライム市場で採用が強く推奨されるという道筋も見えてくるようである。」
演説自体は、こんなに細かいことまではふれていません。けっこう記者の推測が入っているのでは。
金融庁やその周辺(FASF、会計士協会)では、気候変動関連を優先事項としている(それ以外は有報既存開示項目の見直し程度にすぎない)ように見えますが、首相の演説では人的資本関連の開示にふれていて、気候変動自体はテーマとしているものの、その開示にふれておらず、微妙な差があるようです。四半期開示見直しについては、今のところ、金融庁の具体的な動きはないようです。
もちろん、今後、首相周辺と金融庁の間ですりあわせがなされて、統一した方向が決まっていくのかもしれません。
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