米国で販売したピックアップトラックの防さび加工が不十分だとしてトヨタ自動車が訴えられていた裁判で、和解になるという記事。
「トヨタ自動車が米国で販売した一部のピックアップトラックなどで、防さび加工が不十分だとして所有者が起こした集団訴訟があり、トヨタが約34億ドル(約3600億円)を支払うことで和解に合意したことが分かった。複数の米メディアが13日までに伝えた。
報道によると、主力ピックアップトラック「タコマ」「タンドラ」など一部車種をめぐり、防さび加工が不十分でフレームが腐食しやすいとして所有者が補償を要求。これに対し、トヨタが点検や修理費用の支払いで合意したという。」
この記事だと34億ドルを実際に支払うように読めます。他の報道も金額を強調していますが、よく読むと、34億ドルというのは原告側の弁護士が計算したもので、その金額をトヨタが現金ですぐに払うということではなさそうです。
Toyota agrees to $3.4bn rust dispute settlement in US(BBC)
33.75億ドルというのは、弁護士が計算したもので、1台当たり15千ドル(150万台)で計算したコストと、90百万ドルの点検費用(1台60ドル)に基づいています。(ちょっと計算が合いませんが、全部が交換されるという前提ではないのかもしれません。)
Lawyers for the plaintiffs estimated the cost of frame replacements at about $3.375bn.
That was based on a cost of about $15,000 per vehicle and inspection costs of about $90m, at $60 per vehicle.
トヨタは販売日またはリース開始日から12年間にわたり、フレームの交換が必要かどうか点検を続けるということなので、実際に交換が行われるかどうかはわかりません(交換される場合はトヨタの負担)。既に自費で交換した顧客についてはその費用が支払われます。12年分(そのうちの未経過分)の点検費用がかかるというのは確実なので、その分の引き当ては必要でしょう。
Under the terms of the agreement, Toyota will inspect the vehicles for 12 years from the day they were first sold or leased in order to ascertain if frames need to be replaced at company expense.
もちろん、現時点の情報で、将来何台分の交換が必要になるのかを見積もって、費用計上する必要はあるわけですが...。
Toyota to settle truck rust lawsuit for up to $3.4 billion(Automotive News)
9.75百万ドルの弁護士費用などをトヨタ側が負担するそうです。
Toyota also agreed to pay $9.75 million in attorneys' fees, $150,000 in costs and expenses, and $2,500 each to the named eight class representatives as well as the cost of advertising the settlement.
一部報道について(トヨタ自動車)(PDFファイル)
これだけでは何のことかわからないのでは。
2016年9月第2四半期 四半期報告書(トヨタ自動車)
偶発債務の注記では特にふれていないようです。
(補足)
トヨタ、米事業のリスク管理重要に トラック不備で和解(日経)(記事冒頭のみ)
会社は、当面、計上済みの製品保証引当金でまかなえると見ているようです。
「欧米メディアによると、将来的にフレーム交換などの可能性があるのはトヨタの米国におけるピックアップトラックの主力製品である「タコマ」(05〜10年式)など3車種で、対象台数は約150万台にのぼる。ただ、この台数は3車種の対象となる年式の製品の販売総数で、実際に部品交換などが必要になる台数は限定的とみられる。
同社は製品保証にまつわる費用を販売台数や過去の実績をベースにして引き当てる方式を採用しており、仮に費用負担が発生した場合も当面は「この範囲内でまかなうことができる」(トヨタ幹部)見通し。将来的な引当金の積み増しにつながる可能性もあるが、トヨタは14日に「当期業績への重大な影響はない」とのコメントを発表した。」
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