特捜部や日産からのリーク情報ばかりでは面白くないと考えているのか、日経は日産ゴーン事件を斜めに見た記事が散見されます。
これもそのひとつで、経営者が受け取る福利厚生の問題点を取り上げています。
「日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告を巡る一連の事件では、会社資産の不正流用が論点の一つになっている。住居や社用車、飛行機など、役員報酬とは別に経営者が受け取る福利厚生はどこまでが正当か。国内外で厳しい視線が注がれている。」
開示ルールも含め、米国の状況は...
「米国企業は役員の給与やボーナス、ストックオプションなどを除く報酬の開示も義務付けられている。自家用ジェット機や社用車、会計・税務サービスなどが代表例だ。
米調査会社エクイラーによると「フォーチュン100」企業の福利厚生に当たる「その他報酬」の中央値は約10万ドル(約1080万円)。英語で「パークス(perks)」と呼ばれ「役得」や「特権」を意味する。」
「米証券取引委員会(SEC)は昨年、ダウ・ケミカルでCEOを務めたアンドリュー・リベリス氏が約300万ドル(約3億円)の役得を適切に開示していなかったと発表した。会社所有の飛行機を家族旅行に利用したことなどが問題視された。ダウ・ケミカルは175万ドル(約1億9千万円)の支払いや開示の見直しでSECと和解した。
米国ではそもそも高額な役員報酬への批判が強い。「従業員との一体感を重視し、豪華社宅などは役員に提供しないと明記する米企業が増えている」(マーサージャパンの井上康晴氏)」
日本でも開示例があるそうです。
「一方、日本は福利厚生の税法が厳しいこともあり、「米国より少ない」(ウイリス・タワーズワトソンの森田純夫氏)。開示義務はなく、売上高や利益に対する比率も小さいため「通常の監査では指摘しない」と、監査法人の幹部は話す。
開示例も一部ある。日立製作所は有価証券報告書で海外子会社トップの役員報酬の内訳として示す。日立は「必要な福利厚生費用を『フリンジベネフィット』として計上する」という。伊藤忠商事は一部役員の月例報酬に住宅手当が含まれると公表している。」
税法が厳しいのはたしかでしょうが、会社が税法で認められない部分を有税で処理し、役員側もその分を含めて申告していれば、税法的には合法ですから、税法があるからそれだけでよいとはいえないでしょう。
日本でもゴーン氏のような例や、役員のクルーザーの経費を会社に負担させたような例もあり、また、業種によっては昔から交際費(これは海外より派手でしょう)が問題になっていますから、開示のルールを設けて、けん制するのがよいのではないでしょうか。
開示ルール(役員報酬の開示に付随するものとなるのでしょう)があれば、監査人も完全に無視することはできなくなります。
これも日産ゴーン事件を斜めに見た記事。
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ゴーン元会長が落ちたわな 巨額為替評価損、人ごとか(日経)(記事冒頭のみ)
「当時、円高のわなに陥ったのは、ゴーン元会長ひとりだけではない。リーマン・ショック後、企業の円高倒産が相次いだ。円高で輸出企業の採算が悪化したばかりでない。輸入企業などドルの買い手に対して、銀行が盛んに勧めた為替取引が引き金になった倒産も少なからず発生した。
玉川大学の島義夫教授はこんな取引モデルを挙げる。
(1)ドル相場が1ドル=120円の時に、110円という実際より有利なレートで、例えば毎月10万ドルずつドルを購入できる権利を獲得する。
(2)1ドル=130円に円安が進んだ時点で、110円でドルを買える権利は消滅する。
(3)1ドル=110円を割り込む円高になると、今度は110円という実際より不利なレートで、ドルを毎月30万ドルずつ買い続ける義務を負う。
一連の取引の基本は通貨オプションの買いと売りを絡ませたものだ。(1)で生じる「ドルを買う権利」を購入する際のプレミアム(手数料)を払わずに済むように、(3)で「ドルを売る権利」をその何倍も売却しプレミアムを得るように仕組むのである。
こうした取引では(3)の基準点を越え相手方が権利を行使できる局面になれば、不利なドルを買う義務が生じる。
行きはよいよい帰りは怖い。輸入企業などは当初はコストを払わずに安くドルを買えると大喜びだったが、ドルがある限度を越えて上昇すると権利は消滅。そして一定水準を割り込むと、今度は不利なレートのドルを必要以上に押しつけられたのである。
いま為替市場では米利上げ観測の後退で円高・ドル安の雰囲気が漂う。ゴーン被告が落ちた円高のわなは人ごとではない。経営者も投資家も取引の点検が欠かせまい。」
こういう取引だとしたら、銀行にはめられてしまったゴーン氏に同情したくなります。そもそも、外国に本拠をもつ外国人役員が増えているのに、制度的に、円貨で固定した報酬しか支払えず、外貨建ての報酬支払ができないとしたら、そのことも問題でしょう。
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