ASBJが8月30日に公表した「工事契約に関する会計基準(案)」について、情報システム業界特有の商慣習が考慮されていないと反発する声があがっているという記事。
ちなみに、基準案では、受託ソフトウェアを範囲に含めたことについて、結論の背景で次のようにいっています。
「受注制作のソフトウェアの制作費については、「研究開発費等に係る会計基準(企業会計審議会 平成10 年3 月)」四1 において、請負工事の会計処理に準じて処理することとされており、このような取引についても、契約の形態(請負契約の形態をとるか、準委任契約の形態をとるか等)を問わず、本会計基準の適用範囲に含めることとした。」
要するに先行している基準が請負工事と同じだといっているので範囲に含めたということで、議論した形跡はあまりみられません。
信頼性をもった見積りができないのなら、完成基準を適用すればよいので、影響はないという考え方なのでしょうか。ASBJが本気で受注制作のソフトウェアまでターゲットにするつもりで基準を制定したのか、あるいは、基準が導入されても完成基準が適用されるだろうと考えているのか、知りたいところです。
もっとも、記事によれば、野村総合研究所や富士通などは進行基準を適用しているとのことなので、業種の違いの問題ではないのかもしれません。
「信頼性をもった見積り」というところに注目すると、進行基準適用が多い場合には、きちんとした見積りができるような原価管理や進捗管理を行っている会社ということになり、完成基準適用が多い場合には、見積もりできないほど管理の水準が低いのだろうというように、会計処理から管理の水準を推測するようになるかもしれません(ソフトウェア会社だけでなく、建設業でも同じかもしれませんが)。海外の基準では、見積もりが難しい場合、売上と原価を利益が出ないように両建て計上する方法で進行基準が適用されるそうですが、日本基準(案)では、適用される基準自体がまったく違っているので、目立ってしまいます。
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