週刊経営財務の18.10.16号で、会計士協会が公表した「退職給付会計における未認識数理計算上の差異の費用処理年数の変更について」の解説の一部として、処理年数変更事例が紹介されていました。
これをみると、17年3月期までは、複数年償却から一括償却への変更が多かったのに対し、18年3月期は変更件数が少なくなるとともに、一括償却への変更事例がゼロになっています。
当サイトでも取り上げた旭化成(一括償却に変更後18年3月期に複数年償却へ再度変更)は変更理由として以下のように述べています。
「・・・数理計算上の差異を1年間で費用処理することにより、営業費用に多額の数理計算上の差異に係る費用処理額が含まれることとなった結果、営業利益、経常利益、当期純利益の変動要因の相当部分を数理計算上の差異に係る費用処理額が占める状態となっている。このため、利益水準の変化が必ずしも事業業績の動向・評価を端的に表さないことにより、表示の明瞭性から望ましくない状況を招いている。・・・」
こうした一括償却のデメリットは、一括償却にした時点でわかっていたはずですから、複数年償却に再度変更する理由にはなりません。会計方針の変更を甘く見すぎているといわざるを得ません。
一方、四国電力は17年3月期に一括償却に変更しており、次のような理由を挙げています。
「・・・当連結会計年度に一括費用処理し、財務の健全化を図るとともに、退職給付債務の状況を適時に連結財務諸表に反映させるため」
退職給付債務や年金資産の毎期の変動をそのまま業績(つまり損益計算書)に反映させたくはないが、他方、退職給付制度の積み立て状況を貸借対照表に適時に反映させる必要はある、ということになると、米国の新しい基準のように、損益計算書では遅延認識を行い、貸借対照表では積み立て状況を直ちに認識する(差額は包括利益計算書(あるいは株主持分変動計算書)に放り込んでおく)という方法がよいのではないでしょうか。
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