会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

消費税引き上げ早くて2─3年後、複数税率や還付も検討=首相(ロイターより)

消費税引き上げ早くて2─3年後、複数税率や還付も検討=首相

菅首相が記者会見で、消費税の引き上げ時期などについて述べたという記事。

「・・・参院選後の早期に超党派による議論に入りたいと述べ、議論の参考として、自民党が提示した10%の税率を目安とする考えをあらためて表明。消費税の持つ逆進性を緩和するために複数税率や税の還付制度などの導入を検討する方針も示した。具体的な消費税の引き上げ時期については、超党派協議の実現性や、複数税率・還付制度の導入に伴う環境整備などを念頭に「早くても、これから2─3年後になる」と指摘。」

単純に税率を上げるだけなく、複数税率を導入するとなると、現行の帳簿方式の見直し(インボイス方式へ)、仕入税額控除の方法の変更、納税者(国民)背番号制の導入など、消費税の仕組み自体が大きく変わる可能性があります。

菅首相:消費税引き上げ「少なくとも2年、3年」 会見で(毎日より)

(会見要旨より)

「--消費税は早ければいつから増税となるか。

 逆進性を緩和するために複数税率を入れるとなるとインボイス(税額明記伝票)の準備が必要で、(税の)還付の形を取る場合は番号(納税者番号制度)の導入が必要になる。少なくとも2~3年、あるいはもう少しかかるのではないか。」

例えば、流通の中間段階では税率10%で統一、最終の小売りの段階で食料品だけ5%で据え置きとすると、消費者向けの食料品店では、預かり消費税は5%で計算する一方、仮払い消費税は10%で計算することになります。その10%の仮払い消費税を全額控除できるとするのか、一部だけしか控除を認めないのか、どちらの制度もあり得ます。理論的には前者が正しいと思いますが、そうすると、消費税の還付を受ける業者が多くなって、そこで不正が起こる可能性が高まります。それを防ぐためには、インボイス方式にして、10%の消費税が仕入額の中に入っているという証拠を、保管させて、税務調査で厳しく調べるということにもなります。

このように、税率だけでなく、消費税の仕組みがどうなるのかにも注目する必要があります。(IFRSどころではない?)

(補足)

・コメントでご指摘をいただいて、「預かり消費税は10%で計算」という個所を「5%」に直しました。(売上と仕入れの両方が同じ税率なら仕組みとしては今と同じになってしまいます。)

・この「5%」というのは、非課税のゼロ%でも理屈は同じです。現行の非課税売り上げは、仕入にかかる消費税は控除できないので、その分は売上に上乗せせざるを得ず、非課税といいながら、最終的に消費者が消費税を負担します。5%ならそれでもよいのかもしれませんが、10%以上の税率になれば、いわゆるゼロ税率方式でやるのが理論的でしょう。

・上記の設例では、単純化のため、中間段階では同じ税率としましたが、企業が小売店で食料品を購入することもありうるわけですから、仕入も複数の税率にならざるを得ません。経過措置による旧税率適用取引もあるでしょうから、相当複雑になりそうです。
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